2023 Fiscal Year Annual Research Report
Are stopping powers for C60 ions 60 times as large as those for C ions? - an approach by measuring secondary particles
Project/Area Number |
18K05005
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
鳴海 一雅 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先進ビーム利用施設部, 次長 (90354927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 阻止能 / C60イオン / スパッタリング / 二次電子放出 |
Outline of Annual Research Achievements |
スパッタリングには核的衝突及び電子励起に由来する2種類がある。前者は核的衝突が支配的な、後者は電子励起が支配的な速度領域でそれぞれ優勢である。本研究では核的衝突が支配的な速度領域でC60、C70、Cイオンによる金のスパッタリング収量を測定した。その結果、C60、C70イオンについて入射イオン1原子当たりのスパッタリング収量がほぼ等しくなる一方で、観測されたスパッタリング収量が同じ速度のCイオンの120~240倍程度になることを明らかにした。また、いずれのイオンによるスパッタリング収量の速度依存性もSRIMコードによるシミュレーションの速度依存性とほぼ等しくなった。SRIMコードは核的衝突に由来する現象のみ扱うので金のスパッタリングは核的衝突に由来すると結論づけられる。 次に核的衝突が支配的な速度領域でC60、C70、Cイオンによる非晶質炭素のスパッタリング収量を測定した。得られたスパッタリング収量は速度に対して単調に増加し、また、1原子当たりのスパッタリング収量がC60、C70、Cイオンでほぼ等しくなった。一方で、核的阻止能に由来する極大を示すSRIMコードの結果と異なり、1原子当たりのスパッタリング収量は速度に対して単調に増加することから、観測されたスパッタリングは核的衝突に由来するものではないと考えられる。観測されたスパッタリング収量を電子的阻止能の関数としてプロットするとスケーリングできることから、観測されたスパッタリングは電子励起に由来することがわかった。核的衝突が支配的な速度領域にもかかわらず、金の場合とは異なり、非晶質炭素のスパッタリングは電子励起に由来する。この結果から、非晶質炭素と金では電子励起に対する応答が異なると考えられる。非晶質炭素と金の電子系の違い、即ち前者は共有結合、後者は金属結合であることが原因ではないかと考えられるが、そう結論づけるためにはさらなる検討が必要である。
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