2018 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental research on quantitative seismic emisson tomography
Project/Area Number |
18K05012
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三ヶ田 均 京都大学, 工学研究科, 教授 (10239197)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武川 順一 京都大学, 工学研究科, 助教 (70463304)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 受動的地震探査 / Seismic Emission / 流体運動 / 格子ボルツマン法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、格子ボルツマン法による流体流動シミュレーションを手法として,貯留層内部の流体流動に起因する振動が地表で観測されること,そしてその観測波形からモニタリング可能な地下の現象を推定することを試みた。その結果,水油二層流によって生じる地震動を長期間計測することで貯留層の可視化が可能であること,そして貯留層内部の水-油二相流やガス-油二相流という混相流体の流れによって生じる振動から,その流動域のみならず流体の性状に関する情報をも内包していることを確認した。さらに本研究では,格子ボルツマン法の適用時に,流体の物性値の厳密な議論を行い,手法の定量的な評価に踏み込む研究も実施した。まず流体の音速を実流体の値と一致させたモデル(音速モデル)に対し数値実験をおこない、次に,計算効率を重視し音速を極端に低速とした一般的なモデル(一般的モデル)で同様の数値実験をおこなった。この双方の結果を比較することで,格子ボルツマン法による結果と流体力学的に得られる結果間の定量的な関係を見出した。すなわち,格子ボルツマン法による流体流動解析結果は,音波速度というパラメータを介し,実流体運動の結果として解釈することに全く問題はないことを確認することができた。今年度のの結果は,本研究で提案しているモニタリング手法により,石油生産や石油増進回収法に伴う貯留層内の流体の性状変化をモニタリングする手法として有効である可能性を示唆していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
格子ボルツマン法の適用時には,計算安定性の確保のため,音波速度を実際の流体中の音波速度からチューニングし,非現実的な音波速度値を用いざるを得ないことがある。既往研究を調査したが,地震波の発生という,流体中の音波速度との関連の深い内容の研究はなく,この非現実的な音波速度の問題が,研究遂行時に浮上した。本研究では,本来の研究内容に加え,この非現実的な音波速度利用の問題に踏み込み,果たして格子ボルツマン法から得られる結果に物理学的な妥当性があるのかを検討することができた。その結果,音波速度を媒介変数として,格子ボルツマン法の結果を現実のモデルに適用することが可能であることを示すことができた。すなわち,シミュレーション結果の妥当性まで含めた成果を導くことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
流体の運動による地震動の発生に関しては,資源探査の分野だけでなく,火山学や水文学などの分野から興味を持たれている。しかし,特に資源探査の分野からは実際の試験的観測から地震動そのものに対する否定的な意見も提起されている。こうした否定的な意見を提起する既往研究では,信号の抽出方法など,その観測方法に問題がある。受動的地震探査は,そのコストの経済性から,今後の発展の期待されている分野でもあり,シミュレーション研究の長所を活かし,観測方法の最適化まで含めた提案を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究に係る研究動向調査のため,海外学会への渡航を中心とした利用を行う予定である。また,計算手法の高度化など必要に応じ,昨年度諦めた高速計算用GPUボードを購入することを検討している。
|