2018 Fiscal Year Research-status Report
シンクロトロン放射光による内殻励起分光法の理論並びに理論プログラムの開発
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18K05027
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
畑田 圭介 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (00813700)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多重散乱理論 / XANES / 光電子角度分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
WorkingPackage (WP) 1「XANESプログラムの開発」の実施計画に沿って、吸収サイトを複数持つ系にも対応したプログラム開発を行った。この成果の重要な点は、同種原子を複数含む分子や金属クラスターのXANES構造がフィッティング可能になった点である。金属を含む系の一例として、生体タンパク質がある。生体タンパク質では金属中心が生化学反応の鍵を握っているが、従来のプログラムでは計算や解析が不可能であった。本研究で開発したプログラムは、このような物質のXANES計算と解析を可能にし、今後化学反応解明に関わる研究の推進に寄与することが期待できるという点で、意義のある成果である。
次にWP2「X線角度分解光電子分光プログラムの開発」において、量子化学計算プログラムMOLCASに対するインターフェースプログラムの開発を行った。光電子角度分光を精度よく計算するためには、光電子放出によって生じる電子空孔(コアホール)の存在を考慮して終状態を計算する必要があるが、第一原理計算で広く使われている密度汎関数法はコアホールが存在する励起状態については計算の正当性が原理的に保証されていない。そのために、X線角度分解光電子分光の計算には密度汎関数法を超えた取り扱いが必要である。第一原理計算プログラム“MOLCAS”は、RASSCF法に対応しており、励起状態の電荷密度をより正しく計算することができる。インターフェースプログラムを作成することによってこの電荷密度を利用し、我々が開発した多重散乱法と組み合わせることにより、光電子角度分光のより正確な計算が可能となった。この手法は、X線自由電子レーザーを用いた実験によって得られるスペクトルの解析に応用することによりフェムト秒オーダーの時間分解能で分子構造の解析が可能になる等、実験解析の観点からも重要な成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プログラムの進捗は概ね順調であり、本研究プログラムの意義に即した成果が得られている。国内では東北大多元研の上田潔教授、山崎馨助教、首都大学東京の中谷直輝准教授、国外ではマドリード自治大Fernando Martin教授、CNRS-レンヌ第一大学Didier Sebilleau研究員らと共同研究を進め、量子化学計算における手法についての議論を行い、量子化学計算プログラムMOLCASを用いて、RASSCF法により、コアホールの空いた励起状態の電荷密度を高精度で計算することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究計画の研究代表者が開発したフルポテンシャル多重散乱プログラムを用い、XANES並びにX線角度分解光電子分光を計算する理論プログラムの開発を引き続き行なっていく。 国内では首都大学、東北大学の化学系のグループと共同研究をし、国外では、フランスレンヌ第一大学、スペインマドリード自治大学の理論グループとの共同研究を推進し、それぞれのグループの専門知識を活かし世界で通用するプログラムの開発を行う。 各グループ間での人的交流を促進し、最新の研究動向のアップデートを行い、最適な研究方法を常に模索していく。
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Causes of Carryover |
本研究計画のWP2「自己無撞着ループの開発」においてワークステーションを購入し、大規模計算プログラムの開発を行う予定であったが、量子化学計算プログラムによる自己無撞着電荷密度を利用することを優先することになったので、購入予定であったワークステーションの購入を一年遅らせた。 当該ワークステーションは今年度購入する予定である。
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[Presentation] Recent developments on ES2MS package2018
Author(s)
Keisuke Hatada, Fukiko Ota, Naoki Komiya, Kaori Niki, Naoki Nakatani, Alberto Marmodolo, Jan Minar, Hubert Ebert, Calogero R. Natoli, and Didier Sebilleau
Organizer
17th International Conference on X-ray Absorption Fine Structure
Int'l Joint Research
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