2019 Fiscal Year Research-status Report
生体分子中のプロトン移動反応解析へ向けた量子多成分系理論の開発と応用計算
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18K05028
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
宇田川 太郎 岐阜大学, 工学部, 助教 (70509356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原子核の量子効果 / 同位体効果 / 化学反応 / 量子多成分系理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が開発してきた水素原子核の量子揺らぎを直接取り込んだ量子多成分系理論による化学反応解析法(量子多成分CI-NEB法)を深化させ、生体分子中の化学反応までをターゲットにできる新しい量子多成分系理論を開発する。具体的には、(1A)遷移状態構造を効率的に求めるための拡張および(1B)効率良く反応経路全体を求めるための拡張により、量子多成分系CI-NEB法の高速化を達成する。さらに量子多成分系ONIOM法を実装し、(1C)生体分子を効率良く取り扱うための拡張を行う。開発した量子多成分系理論により、(2A)モデルDNA塩基対中の多重プロトン移動反応の解析、(2B)タキソール分子中の多段階プロトン移動反応の解析および(2C)緑色蛍光タンパク質内のプロトン移動反応の解析を初めて実現する。 R1年度は項目(1C), (2B), (2C)に着手した。まず、項目(1C)では、複数の計算手法を組み合わせることで、反応に重要な部分の計算精度を保ったまま計算時間を削減するONIOM法を量子多成分系理論プログラムに実装した量子多成分系ONIOM法を開発し、水素原子核の量子揺らぎを考慮して生体分子のような大きな系を効率良く取り扱うことが可能になった。前年度実施項目(1A), (1B)で開発した手法とあわせ、これまでに量子多成分CI-NEB法による反応解析の顕著な高速化を達成した。 またR1年度には、項目(1A), (1C)で開発した手法を用い、項目(2B), (2C)にも着手した。ここまで、ほぼ申請時の計画通り研究を実施することができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R1年度は(1C)生体分子を効率良く取り扱うための拡張, (2B)タキソール分子中の多段階プロトン移動 反応の解析および(2C)緑色蛍光タンパク質内のプロトン移動反応の解析について取り組んだ。前年度に実施した項目(1A)および(1B)の成果により、(2B)についてはこれまでの数十分の一の計算コストで反応解析を行うことができた。 項目(1C)では、複数の計算手法を組み合わせることで、反応に重要な部分の計算精度を保ったまま計算時間を削減するONIOM法を量子多成分系理論プログラムに実装し、量子多成分CI-NEB法による化学反応解析にかかる時間を大幅に削減することに成功した。開発した量子多成分ONIOM-CI-NEB法を用い(2C)について予定通り取り組み始めることができた。 以上の進捗状況により、全体として研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度は、これまでに開発したプログラムを用い、引き続き項目(2C)に取り組む予定である。すでに計算対象とするモデル分子の構築は終えており、大きな問題なく予定通り水素原子核の量子揺らぎを含めた緑色蛍光タンパク質内の基底状態プロトン移動反応解析に速やかに取り組むことが可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた国際会議への参加を取りやめるなど、予算執行計画に変更が生じたため。
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Research Products
(24 results)