2019 Fiscal Year Research-status Report
Laser spectroscopy and multivariate analysis to observe infrared absorption cross section of size-selected clusters
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18K05029
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松本 剛昭 静岡大学, 理学部, 准教授 (30360051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 佳哉 広島大学, 理学研究科, 教授 (30311187)
森田 成昭 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (20388739)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 二次元相関分光法 / 分子クラスター / キャビティリングダウン分光法 / 赤外分光 / 質量分析 / 真空紫外光イオン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
・飛行時間型質量分析装置の整備、真空紫外レーザー光を発生させるための希ガスセルの設計を行なった。また、キャビティリングダウン分光と光イオン化を同時測定するための新規加速電極を設計した。さらに、2次元相関分光法のためのPythonプログラミング環境の整備して、主成分分析と2次元相関解析の高性能化を行なった。赤外スペクトルデータセットに主成分分析を適用し、高スコア成分の除去によるノイズ軽減を行うことにより2次元相関スペクトルの高分解能化が可能となった。 ・超音速ジェット中に生成した二成分系巨大溶媒和クラスターの2次元相関赤外分光を行なった。アセトン及びアセトニトリルを極性溶媒として、溶質分子であるピロールのNH伸縮振動を観測した。2次元異時相関スペクトルの解析により、第一及び第二溶媒和圏のスペクトル分離に成功した。 ・超音速ジェット中に生成したシラン化合物を受容体とした二水素結合クラスターの赤外キャビティリングダウン分光を行なった。メタノールを水素結合供与体としたとき、単量体より30cm-1ほど程端数シフトしたOH伸縮振動が観測された。DFT計算により得られた最適化構造は折れ曲がり型のSi-H...H-Oを示し、古典的な水素結合の直線性とは大きく異なることが見出された。 ・超音速ジェット中に生成したピロール・酸化プロピレンクラスターの赤外分光を行なった。「酸化プロピレン同士のキラル選択性がピロールによる強い水素結合で協同効果的に増幅される」という仮説を立て、1-2クラスターのNH伸縮振動を観測した。ホモキラルおよびヘテロキラルに由来するバンド強度比をピークフィット法で見積もった結果、ヘテロキラルの方が1.4倍ほど有利であることがわかった。しかし、汎用的な理論計算ではホモとヘテロは等エネルギーであったため、キラル選択性の源を探るための高精度理論計算が今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・当初の研究計画では、光イオン化飛行時間型質量分析真空チャンバーとYAGレーザー第四高調波である266nmの紫外光を用いたベンゼンクラスターの質量スペクトルの測定を目標とした。これにより、譲り受けた真空装置の動作確認を行うとともに、質量分析のための測定パラメータの最適化を行う予定であった。しかしながら、研究室所属学生の研究指導に集中すべく多くの時間が割かれたこと、現在所有しているレーザー装置に経年劣化が原因の故障が見つかり、そちらの保守作業に時間が割かれたことなど、時間と人手の不足により目標を達成することができなかった。さらに、2020年3~4月にYAGレーザー第四高調波発生のテストをする予定でいたが、COVID-19感染防止の要請を受けての研究室活動停止に伴い、中止せざるを得ない状況となった。 ・本研究課題の協力研究者でもある大阪電気通信大学の森田成昭教授を本学に招き、Pythonプログラミング環境の整備充実を図った。特に、2次元相関分光法のためのPythonプログラミング環境の整備をして、主成分分析と2次元相関解析の高性能化を行なった。赤外スペクトルデータセットに主成分分析を適用し、高スコア成分の除去によるノイズ軽減を行うことにより2次元相関スペクトルの高分解能化が可能となった。今後、質量スペクトルと赤外スペクトルとの間のヘテロ型2次元相関分光の解析を行う上で、このプログラミング環境の整備は大きな進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
・光イオン化飛行時間型質量分析真空チャンバーとYAGレーザー第四高調波である266nmの紫外光を用いたベンゼンクラスターの質量スペクトルの測定を第一の目標とする。そのためのYAGレーザーの出力最適化を2020年6月を目処に行う。そして、飛行時間型質量分析部の電極電圧、パルス遅延、イオン検出電圧などの最適化を2020年12月までに終える。この時点でベンゼンクラスターの質量スペクトルの取得が可能となっているはずなので、クラスター生成条件(キャリアガスに対するベンゼン蒸気分圧)をパラメータとして質量スペクトルを測定し、そのデータセットを用いた2次元相関分光を適用する。特に異時相関スペクトルの解析を通じて、ベンゼンクラスターの魔法数ついての情報を得る。 ・紫外レーザーによる光イオン化実験の進行と同時に、赤外分光を行うための光学キャビティを飛行時間型質量分析チャンバーに装着するための部品製作を行う。光イオン化を行うためのレーザーとキャビティリングダウン分光を行うための赤外レーザーが、分子線上で互いに直交する配置となるようにフランジ等の加工を行う。これを2020年12月までに完了する。 ・紫外レーザーによる光イオン化実験の進行と同時に、真空紫外レーザー発生のための装置開発と分子のイオン化試験を行う。118nmと355nmで同時に質量スペクトルを測定し、それらの間でヘテロ型2次元相関分光を行うことで、光イオン化断面積のクラスターサイズ依存性を調べる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大防止の方針で年度末に開催予定だった学会が中止されたため、使用する予定だった旅費を次年度に使用することとした。
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Research Products
(8 results)