2018 Fiscal Year Research-status Report
SEM observation studies on crystallization hysteresis relevant with solution structures
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18K05032
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅原 武 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20335384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 溶液構造 / 過冷却 / 結晶化機構 / 蓄熱材 / 相平衡関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、潜熱蓄熱材料などの実用化の障壁となっている過冷却現象について、実用化に必要な「過冷却のコントロール」を最終的な目的としている。その目的を達するため、平成30年度は、溶液中に存在する事が示唆されている溶液構造に関する以下の測定を行った。 生きている溶液構造を電子顕微鏡で高解像度で観察する手法として凍結割断レプリカ法を用い、調製したレプリカ膜を電子顕微鏡で観察した。一方、溶液構造が形成され結晶へと変化する過程における分子間・分子内の振動状態変化を顕微インターバルラマン分光分析にて測定するとともに、微小熱示差走査熱量計を用いた熱容量や相変化エンタルピーの測定を行った。溶液構造と結晶を構成する基本構造に共通点があることを明らかにすると共に、溶液内の構造体の存在を示唆する熱容量の変化など、結晶化の前段階と考えている溶液構造形成に関する基本的な予備データの取得を行った。 また、新たに潜熱蓄熱材の候補となり得る系を探索し、数種の物質の平衡温度-組成関係や分解エンタルピー、生成時の最大過冷却度と組成の関係を測定した。ゲスト分子を構成する物質の構造、大きさ、置換基などが、潜熱蓄熱材の分解温度や分解エンタルピーにどのように影響するのかを明らかにした。 さらに、圧力によって誘起される熱量効果に関する国際的な共同研究に参画し、その物質が比較的小さな圧力によって、従来の固体冷媒の10倍に及ぶ熱量変化を生じる巨大な「圧力熱量効果」を持つことを実測することにより確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の故障による修理・調整に時間がかかり、凍結割断レプリカ法を用いた電子顕微鏡観察にやや遅れが見られるものの、その他の測定に関しては概ね順調に進展している。また、圧力によって誘起される一種の潜熱蓄熱材として、新たに巨大な「圧力熱量効果」を持つ物質の研究に参画し、そのメカニズム解明の一端を担う事が出来た事は、当初計画にはなかったものであるが、世間の注目を浴びた結果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
凍結割断レプリカ法を用いた電子顕微鏡観察を推進し、結晶析出へ向けた過冷却溶液内部の微細構造変化、結晶の生成・溶解などの動的過程を観察する。また、分光測定、熱測定を並行しておこない、溶液構造と結晶の類似性、結晶化機構の解明を行う。これらに加え、令和元年度は過冷却のコントロールへ向けた手法を探索を開始し、圧力やその他のトリガーの探索、結晶化を促す添加剤の探索などを行う。
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Causes of Carryover |
米国において参加予定であった国際会議の参加を見送ったこと、消耗品の損耗状況が想像より良好であった事から、この額の次年度使用分として生じた。成果発表・情報収集を課題申請当初に予定していた学会等に追加して参加することと、装置の有効性が本年度明らかになった微小熱示差走査熱量計の容器を追加購入し、測定の効率化を図る。
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Research Products
(14 results)