2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
香川 晃徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70533701)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動的核偏極 / 核磁気共鳴 / 電子スピン共鳴 / 光励起三重項状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的な動的核偏極は、NMRやMRIの感度を飛躍的に増大させることが可能であるが、大きな電子スピン偏極を得るために4.2K以下の極低温や高磁場環境が必要となっている。我々は温度や磁場に依存せず大きな電子スピン偏極を持った光励起三重項電子を用いる動的核偏極(トリプレットDNP)の研究を行っている。本研究では、トリプレットDNPに適した三重項状態を持つ水溶性の新規な分子探索を行うことで、トリプレットDNPの汎用性向上を目指している。 本年度は、前年度に開発したパルス電子スピン共鳴(ESR)装置を用いて、光励起で生成された三重項電子スピンの電子スピン偏極、ゼロ磁場分裂定数、減衰時間等の評価を行った。ローズベンガルとTEMPOを添加した溶液を試料として用いた。100K程度に冷却して実験を行ったがTEMPOのESR信号の大きな増大は得られなかった。これは予想していた値より固体中ではローズベンガルからの偏極移動効率が低くなっているためであると考えられる。室温で行われていた先行研究とは異なり、低温下ではローズベンガル分子の光励起による劣化が少ないことが分かった。また汎用的なNMR研究に応用するための高磁場・高分解能なNMR測定が可能なプローブの作製を行った。低磁場下での高偏極化後に試料を移動、溶解を行うことで、高磁場下で10Hz程度の線幅の信号をリアルタイムな溶液NMR測定が可能になった。低磁場下でのNMR測定とは異なり、化学シフトなどの重要なパラメータの決定が行えるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予想していたよりも電子スピン間での偏極移動効率が低いために、ESR信号の増加が得られておらず、研究計画より進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで溶媒としてグリセロールと水の混合物を用いて、100Kまで冷却して実験を行っていたが、今後はローズベンガルの劣化を抑えつつ液体中でも実験が行える温度の探索を行う。また原理検証のためエタノールなどの融点が低い溶媒で実験を行うことを考えている。さらにこれまでに高偏極化可能安分子の種類を増やすことが可能な共晶を形成する試料についても研究を行う。三重項状態の電子スピン特性評価にはこれまで開発したパルスESR装置だけでなく、連続波での測定も有効であると考えられるため、それらの装置開発も行う予定である。
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Research Products
(4 results)