2018 Fiscal Year Research-status Report
ラマン光学活性分光法による光受容タンパク質の反応中間体の計測と応用
Project/Area Number |
18K05037
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤澤 知績 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60633493)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 光受容性タンパク質 / 反応中間体 / ラマン光学活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命活動を維持するタンパク質の中には、酵素のように化学反応を担うものや、視覚を司る網膜タンパク質のように光化学反応とともにシグナル伝達等の機能を発現するものがある。このようなタンパク質において、化学反応は「活性部位」といわれる反応サイトで起こり、その反応機構を理解するためには時々刻々と変化する活性部位の3次元的構造を分子レベルで明らかにすることが重要となる。しかし、今日にいたるまで活性部位の3次元構造を観測する方法が極めて限られているのが実情である。本研究では、分子の立体構造に鋭敏なラマン光学活性分光法(ROA分光法)の活用・発展させることで、タンパク質の活性部位の立体構造変化を明らかにすることを主眼とした。 初年度は、バクテリアの光受容性タンパク質の代表格である微生物型ロドプシンを対象として、その初期反応中間体の低温ラマン測定を実施した。イオンポンプ型や光センサー型といった種々の微生物型ロドプシンの初期中間体について質の高いスペクトルデータを得ることができ、中間体の構造の特徴を詳細に検討した。また、これら微生物型ロドプシンの初期反応中間体のラマン光学活性測定を実現するために、近赤外レーザーを光源としたROA装置の改良した。その結果、装置の安定性と耐久性が飛躍的に向上した。これまでROA信号が弱く、測定が困難であった微生物型ロドプシンに対しても、(光反応前の)始状態について良好なROAスペクトルを得て、その立体構造解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質の反応中間体のROA測定を実現するには、低温下のラマン測定において反応中間体の質の高いラマンスペクトルを得ることが必須となる。現在のところ、複数の微生物型ロドプシンの初期中間体から非常に強いラマン信号が観測されることを見出した。またROA装置の安定性も向上したため、反応中間体のROA測定が現実的な段階にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
初期反応中間体の構造が不明な光受容性タンパク質は未だ数多くある。そのため微生物型ロドプシンに限らず、他種の光受容性タンパク質の低温ラマン測定を実施する。また今後は、これまで行ってきた低温下のラマン測定をROA測定にまで発展させる。ROA信号は微弱であり、微弱なROA信号の質を上げるためには少なくとも1週間程度の測定時間が必要になると考えている。低温下での試料の円偏光性のチェックや長時間測定のための試料(および低温装置)の安定性のテストから実施する。
|
Causes of Carryover |
本年度に必要となった分光実験用の消耗品を購入した結果、約25万円の余りを生じた。次年度に測定を予定するタンパク質試料および試薬等の購入に充てる。
|
Research Products
(8 results)