2018 Fiscal Year Research-status Report
Solvation Structure and Dynamics in Elementary Reaction of CO2 Electrochemical Reduction
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18K05039
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
梅木 辰也 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00384735)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炭酸水素イオン / ギ酸イオン / NMR / 化学シフト / 自己拡散係数 / 縦緩和時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化炭素(CO2)の電気化学還元は、金属電極の材質によって生成物が異なることが報告されており、炭化水素を主に生じるもの(Cu)、COを主に生じるもの(Au, Ag, Zn)、ギ酸を主生成物とするもの(In, Pb, Sn, Cd)、生成物を生じないもの(Pt, Fe, Ni, Ti)に大別される。これら溶液の電極付近での反応については電気化学測定や各種分光測定によって明らかにされているが、反応素過程におけるバルク領域でのCO2の水和や拡散、生成物の水和や拡散、水分子の再配向については明らかにされていない。バルク領域におけるCO2や各種生成物の溶媒和構造・ダイナミクスの解明は、電解反応の高効率化や高速化を図るための条件最適化につながることが期待される。 本年度は、CO2電気化学還元反応の支持電解質に炭酸水素ナトリウムを、還元反応生成物にギ酸ナトリウムを用いて、炭酸水素イオンやギ酸イオンの水和構造やダイナミクスをNMR分光法の各種測定結果から検討した。その結果、炭酸水素イオンとギ酸イオンはそれぞれで水和構造を形成していることがわかった。また、それらイオンの並進運動は、分子サイズ(分子量)の違いを反映し、ギ酸イオンの並進運動は炭酸水素イオンより速いことが明らかとなった。 CO2還元反応について、電極付近での反応素過程は明らかにされている。本研究は、バルク領域の反応素過程を明らかにする取り組みであり、これによってすべての反応素過程を明らかにすることができ、CO2電解反応のモデル構築が可能となる。本研究は、CO2還元のバルク領域における諸素過程を先駆的な研究であり、有意性は高く、その成果は今後のCO2還元技術の利用と発展に貢献できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、CO2還元物質としてギ酸に着目し、CO2還元のモデル溶液について、そのpHとNMR化学シフトを測定し、炭酸水素イオンの化学平衡や炭酸水素イオンとギ酸イオンの水和構造を明らかにした。また、炭酸水素ナトリウムとギ酸ナトリウムの同位体試料(炭酸水素ナトリウム-13C、ギ酸ナトリウム-13C)を用い、それらの混合重水溶液について、13C核のNMR自己拡散係数、NMR縦緩和時間、核オーバーハウザー効果ファクターを測定し、ギ酸イオンの回転運動や炭酸水素イオンとギ酸イオンの並進運動について検討できた。一方、炭酸水素イオンの回転運動についてはその相関時間が決定できなかったため、議論に至らなかった。本年度は、次年度に計画していたCO2還元後の系についても水和構造やダイナミクスを検討することができ、「(2)おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
炭酸水素イオンとギ酸イオンの混合比を変化させた系について、各種NMRスペクトルやpHを測定する。これらの結果に基づき、炭酸水素イオンやギ酸イオンの水和構造やダイナミクスを議論する。また、ナトリウムイオンの水和構造や水分子のダイナミクスについて、各種NMR測定から明らかにする。
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Research Products
(14 results)