2018 Fiscal Year Research-status Report
Chemiluminescence reaction dynamics on immunoassays and innovative optimization for luminescence efficiency
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18K05044
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 化学発光過程 / 非断熱遷移 / スピン-軌道相互作用 / 分子動力学 / シミュレーション / アクリジニウムエステル / 古典軌道ホップ法 / 量子古典混合モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,化学発光強度が最も強い2,4-ジメトキシカルボニルフェニル10-メチル-10λ-アクリジン-9-カルボキシレイト(以後,DCMACと述べる)と過酸化水素の反応に伴う反応分子ダイナミクス(RMD)を,理論的に解明することを主目的とし,本課題の後半に実施される溶媒運動をも露わに考慮した量子古典混合モデルに基づく非経験的反応分子動力学(ab initio RMD)シミュレーション実施のためのプログラム開発を実施した。 中園 学(九州大学薬学部)らにより,今年度新規に合成されたアクリジニウムエステル誘導体であるDCMACも含め,フェニル基における置換基の種類の差異および位置により発光強度が大きく変化することが報告されている。しかし,誘導体の種類により燐光の強度が変わり,定量的理解には至っていない。そこで量子化学計算を用い,遷移状態および安定構造の探索などを実施した。また,溶媒効果を暗黙分極連続媒体モデル法により静的に考慮した。 これまでの成果と本結果より一つの仮説が見出された。反応経路は,大まかに遷移状態であるジオキセタン構造が現れた後,発光種である三重項状態である励起アクリドンが生成され,この励起種が強い燐光を示す。従って,ジオセキタン構造が現れる前後の反応過程が,燐光の強度を決定している。そして,置換基により明らかに二つの異なる経路に分類されることが判明した。しかし,この結果でも定量的発光強度の再現は出来なかった。 次に,溶媒の運動をも露わに考慮した量子古典混合モデルに基づくab initio RMDシミュレーションのプログラム開発と予備的計算を実施した。約1ピコ秒時間発展させた古典軌道の結果には,ジオキセタン構造が現れなかった。しかし,計算は安定し,系のポテンシャルエネルギーが下がっていることが判明した。従って,脱プロトン化が起こり,ジオキセタン構造を取るものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には予定通り進んでいる。ただし,非経験的反応分子動力学(ab initio RMD)シミュレーションプログラムの開発および予備的計算の実施において変更が必要となってきている。主な理由は,以下の通りである。 古典軌道の時間発展において毎時間ステップに実施する量子化学計算により,on-the-flyでポテンシャルエネルギーとその傾きを求め,分子動力学シミュレーションを実施する。しかし,この量子化学計算において並列計算効率が圧倒的に高い,石村和也(分子科学研究所)が開発したSMASHプログラムをこれまで利用して,開発および予備的計算を実施してきた。特に,本研究で扱う分子のジオセキタン構造が現れる前後の反応過程までは,一重項状態の基底状態で計算を進めるため,1ピコ秒の時間発展も約12日間程度で達成できた。因みに時間ステップ(Δt)は0.05フェムト秒であることを考えると約2000ステップで1ピコ秒に達する。この時の計算条件および計算機環境は,基底関数に6-31G(d),メラー・プレセットの2次摂動法(MP2)に従い,CPUはIntel(R) Xeon(R) CPU E5-2680 v4 (Broadwell core) @ 2.40GHzを用い,28スレッド並列計算である。また,我々が提案するab initio RMDシミュレーションプログラムの全計算コストの9割が,量子化学計算の部分であることから,明らかに素晴らしい性能を示していた。しかし,三重項計算が未サポートであることが判明し,急遽Gaussian 16を利用し,テストを行っている。現在,量子化学計算プログラムの再検討を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況にて述べた通り,量子化学計算における並列化効率が,本研究の推進に大きく依存している。今年度は,SMASHやGaussian 16以外のプログラムパッケージで性能を評価し,最適な解を探し出す。そして,溶媒にジメチルスルホキシド(DMSO)を用い,溶媒を露わに考慮した量子古典混合(QM/MM)モデルを用い,計算を進める。特に,粒子メッシュ・エワルド総和(PME)法を既に取り入れて1ピコ秒の反応ダイナミクスが実現できていることから,引き続き溶媒中の非経験的反応分子動力学(ab initio RMD)シミュレーションを実施し,自由エネルギー評価のもとに定量的議論を行う予定である。 また,上記とは別にヒトアルカリフォスファターゼ(1EW2)とアダマンチルメトキシホスホリルフェニルジオキセタン(AMPPD)との間で起きる加水分解反応により生成する不安定なフェノキシド置換ジオキセタン誘導体を経て,Chemically Initiated Electron Exchange Luminescence(CIEEL)機構(日本語訳が多分ないので私訳すると,化学誘起電子交換発光機構)により生物発光に匹敵する発光をしめす。本年度は,この反応メカニズム解明に着手する。特に,ヒトアルカリフォスファターゼ(1EW2)のPDBデータより,分子動力学シミュレーションを実施し,タンパク質の構造をコンピュータ上に再現する。また,水系の溶媒中では発光が激減することが実験では観測されていることから,水中でのシミュレーションを実施する。仮にタンパク質がコンピュータ上で安定して運動することが確認されれば,PME-QM/MMモデルのもとab initio RMDシミュレーションの予備的計算を進める。
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Research Products
(4 results)