2018 Fiscal Year Research-status Report
拡大PAM(フェニルアセチレンマクロサイクル)を足場とするキラリティ創出
Project/Area Number |
18K05069
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上遠野 亮 北海道大学, 理学研究院, 助教 (60432142)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フェニルアセチレンマクロサイクル / メカニカルヘリカルキラリティ / 二重架橋カテナン / [6]PAM / [12]PAM / 動的ヘリカルキラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
ロタキサンやカテナンの構成要素を共有結合で架橋することにより、多様な新規キラル構造を創出する。それらの明確な分子形状を基にして、キロプティカル特性を定量的に考察する。本研究は、二部分からなる。一つ目は、同一分子量で形状の異なる各種異性体を設計・合成し、それぞれのキロプティカル特性を定量的に比較調査する(形とキロプティカル特性)。二つ目は、キラルな単位構造を同一分子内で複数化し、複数化された集積体におけるキロプティカル特性が、元の単位構造のキロプティカル特性とどのような関係にあるのかを定量的に考察する(数とキロプティカル特性)。以上、二つの観点から、分子形状とキロプティカル特性に関する知見を得ることを目的としている。初年度では、一つ目について実施した。 二つの環状分子が機械的に連結されたカテナン構造に着目した。この二つの環状分子を共有結合で二重に架橋する場合を考えた。具体的には、環状分子としてフェニルアセチレンマクロサイクル([6]PAM)を選択した。[6]PAMは、比較的剛直であり、特定の位置を修飾可能である。これらの構造的特徴に基づき、一連の同一分子量で形状が異なる8種のキラル化合物を設計し、7種合成した。うち、2種は、二つのPAMが積層したシクロファン構造であり、動的にキラルである。別の2種は、[12]PAM構造を有し、分子内での特定の折りたたみにより動的にキラルである。[12]PAMについては、合成例自体が稀少であり、キロプティカル特性に関する報告は、世界的にも最初の例である。二重架橋カテナンは、3種合成を達成し、うち2種について光学分割を達成した。これらは、架橋位置が異なる異性体であるが、旋光度や円二色性において倍近くも異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの環状分子が機械的に連結されたカテナン構造に着目した。この二つの環状分子を共有結合で二重に架橋する場合を考えた。具体的には、環状分子としてフェニルアセチレンマクロサイクル([6]PAM)を選択した。[6]PAMは、比較的剛直であり、特定の位置を修飾可能である。これらの構造的特徴に基づき、一連の同一分子量で形状が異なる8種のキラル化合物を設計し、7種合成した。うち、2種は、二つのPAMが積層したシクロファン構造であり、動的にキラルである。別の2種は、[12]PAM構造を有し、分子内での特定の折りたたみにより動的にキラルである。[12]PAMについては、合成例自体が稀少であり、キロプティカル特性に関する報告は、世界的にも最初の例である。二重架橋カテナンは、3種合成を達成し、うち2種について光学分割を達成した。これらは、架橋位置が異なる異性体であるが、旋光度や円二色性において倍近くも異なることを明らかにし、Chemical Science誌に掲載が決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、二つ目の課題(II-i, II-ii)にそれぞれ着手する。両者の合成には、異なる出発物質を用いるが、戦略的には共通する部分も多いため、同時に検討し、互いにフィードバックできるよう進める。 当初計画には含めなかったが、初年度に得られた知見を基にして、新たに二環縮環によるキラリティ創出をデザインし、[9],[11]PAMに基づくキラル分子の合成も検討する。それぞれの倍化体(四環縮環)の合成にも着手する。
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