2018 Fiscal Year Research-status Report
環状ホスト結晶の認識空間制御による難分離性ゲストの高選択的・広適用性包接法の開発
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18K05070
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
諸橋 直弥 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70344819)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カリックスアレーン / シクロデキストリン / 有機結晶 / アルカン / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はカリックスアレーンおよびシクロデキストリンなどの環状ホスト分子が形成するチャネル構造を持たない分子結晶の認識空間を,目的物質に併せて化学修飾および第三成分の添加により制御し,様々な難分離性の有機分子やレアメタルを競争条件下で高選択的に包接する方法を確立することである。計画した課題に対して,本年度は下記の成果を得た。 1.チアカリックス[4]アレーンをジエチルアミン水溶液中で攪拌することで,二分子のホストがジエチルアミンとの塩形成で架橋された錯体の結晶を調製した。この塩の結晶の有機分子捕捉能を調査した結果,チアカリックス[4]アレーン単体の結晶では捕捉できないゲスト(アルカン,アルケン,アルコール)を包接可能であることがわかり,適用性の拡張に成功した。また,包接結晶の粉末および単結晶X線解析から包接形態を明らかにした。例えば,直鎖アルカンをゲストとした場合,C5-C6アルカンはホスト間の空隙に,C7-C9アルカンは二つのホストが形成するカプセル内に捕捉されることがわかった。これは,チアカリックス[4]アレーン単体が形成する1次元カラム構造の形成がアミンの存在により抑制されたためである。また,この空間を利用することで,直鎖・分岐アルカンの混合液から直鎖アルカンを選択的に包接することにも成功した。 2.シクロデキストリンの結晶によるアミノ酸のエナンチオ選択的包接を検討した。ラセミ体ロイシンのスルホン酸塩がエタノール溶液中から塩を維持したまま包接されることがわかり,ピレン-1-スルホン酸の塩とすると高いエナンチオ選択性が獲得できた。これは,嵩高いスルホン酸の存在によりアミノ酸の配座が固定されためと考えられる。また,他のアミノ酸の包接にも適用可能であることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チアカリックス[4]アレーンをジエチルアミンとの塩とすることで,カリックスアレーン結晶で包接可能なゲストの適用範囲を大きく拡張することに成功した。また,分離が困難なアルカン異性体の選択的包接へ展開できた。一方,シクロデキストリンの結晶を用いたゲストのエナンチオ選択的包接に関する研究例は少ない。しかし本研究では,ゲストを嵩高いスルホン酸塩としてシクロデキストリンの結晶に包接させ,選択性を獲得することに成功した。これは環状ホスト結晶による新しいゲスト認識法確立のための足掛かりとなる。以上より,本研究課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究課題を継続して行いながら,以下の課題に取り組む。 1.カリックス[4]アレーンのヒドロキシ基を直接配位性官能基で置換した誘導体の結晶を用いることで,分離困難な有機分子やレアメタルの直接かつ選択的な捕集法を確立する。従来難しい,ホスト結晶への直接的な金属イオンの捕集においては,ホスト間の水素結合やコンホメーションによる予備組織化を利用する。結晶中の集積構造を利用することで,液-液抽出よりも高い選択性が発現することが期待される。捕集速度が遅い場合は,ホストをアンモニウム塩として,イオン交換による金属イオンの捕捉を試みる。得られる結晶の構造解析などから錯形成挙動を考察し,分子設計へとフィードバックし,目的を達成する。 2.シクロデキストリンの結晶によるアミノ酸のエナンチオ選択的包接における適用性の拡張および選択性の発現機構の解明を行う。まず,シクロデキストリンの結晶による種々のアミノ酸・スルホン酸塩の包接において,選択性が発現する条件(温度,濃度等)をスクリーニングする。包接錯体の生成速度および熱安定性を比較することで,選択性の発現が速度論支配か熱力学的支配であるかを明確にする。その後,包接結晶の粉末・単結晶X線結晶構造解析により,その構造を明らかにし,選択性の発現機構を考察し,分子設計へフィードバックする。最終的に,ホストの構造およびスルホン酸などの第三成分の構造をスクリーニングすることで,種々の無修飾アミノ酸の不斉選択的包接法を確立する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は本年度の研究計画を効率的に遂行したことにより発生した未使用額である。 次年度の請求額と合わせ,研究計画遂行ならびに成果発表に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)