2018 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Studies on Role of Enzymes in Regioselective Biosyntheses of Natural Products
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18K05072
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
森 聖治 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (50332549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | QM/MM計算 / ビリン還元酵素 / 分子動力学計算 / プロトン化状態 / プロスタグランジン合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生化学的に重要な1)プロスタグランジン(PG) D2およびPGF2合成酵素のメカニズム解明、および2)ビリン還元酵素の反応機構解明を中心に今年度は行った。 1)PGD2合成酵素およびPGF2合成酵素のメカニズムについては、反応進行に望ましい、分子動力学計算と、その結果をもとにしたQM/MM計算のセッティングを行った。初年度に引き続き、次年度も、反応経路の検討を行う予定である。 2)シアノバクテリアなどの光合成生物は、細胞内に光合成色素であるビリンを持っている。その色素を分子内にもつタンパク質が、光合成において集光の役割を担う。ビリンの一つであるフィコシアノビリン(PCB)は、ヘム分解産物であるビリベルジンIXα(BV)(A, B, C, Dの4つの環を含む)がフェレドキシン依存性酵素Phycocyanobilin:ferredoxin oxidoreductase (PcyA)によって還元され、生成する。2015年にシアノバクテリア由来のPcyA-BV複合体の中性子結晶構造解析が行われ、BVのプロトン化状態を含む構造が明らかになった。この構造では、BVがプロトン化している構造と中性の2種類の構造の混在が示唆され、周囲残基のプロトン化状態の断定には更なる検討が必要であることが示唆された。マルチフィジックス法であるONIOM-EEレベルによるエネルギー一点計算の結果より、C環が脱プロトン化している中性のBV構造が中性子結晶構造に最も適していることが示唆された。周囲アミノ酸残基の立体配置を考慮した結果、この構造は反応初期段階であることが考えられる。この構造を基に、反応機構における活性部位のプロトン化状態の検討を行った。それぞれの反応段階で、BVのプロトン化状態が周囲アミノ酸残基であるAsp105によって制御されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2) ビリン還元酵素の反応機構解明、については、基質であるビリベルジンIXαと酵素の複合体結晶構造におけるプロトン化状態に関する学術誌論文を報告したほか、国際会議の招待講演を行った。プロスタグランジン合成酵素の反応と同様、非常にチャレンジングな反応のため、メカニズム解明の検討を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
ONIOM法のようなQM/MM計算については、たんぱく質のような大規模系に対して構造最適化の収束が大変遅い。計算機の充実と、構造最適化においてもさまざまなテクニックがあるので、工夫し利用していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度では、必要と思われたコンピュータの購入を行わず、自然科学研究機構 岡崎共通研究施設の計算機を利用したため、未使用分が生じた。次年度は、成果発表および国際共同研究における情報交換のための、タイで行われる国際会議への参加を予定しているため、必要となる旅費等に充当する。
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Research Products
(6 results)