2020 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Functional Phthalocyanines having Spectroscopic Characteristics
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18K05076
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 長夫 信州大学, 繊維学部, 特任教授 (60124575)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フタロシアニン / 性質 / 合成 / 機能 / ポルフィリン / 理論計算 / 分子軌道 / スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題名は「分光学的特徴を有する機能性フタロシアニン類の創出」である。コロナ下で思う様に実験できない部分があったが、以下の様な成果を8報の論文に纏めた。フタロシアニン(Pc)のメソ位窒素を炭素に換えた分子(TBP)の中央に5価のリンを導入し、その化合物の物性を報告した。これは対応するPc類が理論的にも実際も通常のPcより遥かに長波長側に吸収を示したためであるが、本化合物群でも同じ様なデータが得られた。更に理論計算によりその理由も示した。またPcの外部ベンゼン環を除いた誘導体であるテトラアザポルフィリンのピロール環が1つ或いは隣接で2つ還元された化合物では、分子の対称性の低下により吸収帯の大きな分裂により、今まで対称性の良い化合物では現れない領域に吸収を出現させること、および吸収帯の形を変えることに成功した。通常Pc類では4つのピロール環の窒素が全て内側の金属に配位しているが、二つが配位していない誘導体を合成した。大きな特徴としてHOMOとHOMNO-1のエネルギー差が、LUMOとLUMO+1のそれより小さいと言う通常の場合と真逆の関係が得られた。また亜鉛Pcでピロール窒素が3つだけ配位しているPcも合成した。軸配位子として強酸性脱離基を結合したためであるが、この脱離基の存在により、水を活性化することができた。カルボキシル基を4つ有するCuPcが、DNAのG4量体に特異的に結合することを見出した。テトラチアフルバレンが縮環したSiPcの対面型オリゴマーが、酸化還元に刺激応答し分子配向を変えることを報告した。このSiPcオリゴマーを用いてLiイオン電池を作成し、SiPcモノマーを用いた電池より性能が良いことを見出した。通常の4n+2パイ系のみならず4nパイ系を含む光学活性フタロシアニン類の総説を纏めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ下で学生は密を避けるため思う様に実験ができなかったし、学会などへの参加も諦めざるを得なかったが、目標に向かって効率的に研究をし、成果を発表できたと考える。 研究は進んだが、期待した効果より小さい系もあった。上記5価リン挿入のPc誘導体であるPTBPでは最長波長吸収体はPPc体ほどには伸びなかった。しかしTBP誘導体としては今まで報告されたものの中で一番長波長で、水溶化すれば癌の光化学治療に最適の波長であった。ピロール窒素が2つしか内側を向いていない誘導体は合成に数年かかりやっと発表にこぎつけた。今まで報告されたことのない基本骨格で有り、分光学的性質もやはり予想つけがたいもので、これから総説などに引用されると思われる。テトラチアフルバレン縮環の対面型SiPcは、酸化還元反応でお互いの面の回転角、配向が変わり、それを用いて作成したLi電池が、SiPc単量体を用いたLi電池より効率が良い結果が得られたのは朗報であった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ下で学会参加もできず、また密を避ける関係から実験時間が多く取れていない。それ故、令和2年度で終了予定の本研究も1年延長させて頂いた。合成が一般的に難しいこともあり、4nパイ系の化合物の合成が相対的に遅れているので、こちらにより多くの時間とエネルギーを費やしたい。特に4nパイ系で光学活性の新規Pc誘導体を合成・報告したい。目標とする第一の化合物はしかも複核錯体である。ESR, 磁化率測定などは装置のある研究室に出張してデータを集める予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度はコロナウィールスへの警戒から思うように実験が出来なかったこと、更には学会参加も出来なかったことから次年度への繰り延べを行なった。令和2年度の実験計画が遅れている事より、それの挽回を目指す。そのため試薬、ガラス器具など消耗品の購入に予算を使う。具体的には合成の比較的難しい4nパイ反芳香属性の化合物の合成と特性化に力を入れる。コロナがいつ収束するか判らないが、学会が行われれば発表するし、学会がなくとも少なくとも結果の論文化は行う。合成した4nパイ化合物の磁化率の測定やESRの測定は本学では出来ず、他大学の装置を使わせて頂く関係上、出張の機会も増えると思われるが、これもコロナの収束にかかっている。
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[Journal Article] Synthesis and Aromaticity of Benzene-Fused Doubly N-Confused Porphyrins2020
Author(s)
H. Uno, K. Muramatsu, S. Hiraoka, H. Tahara, M. Hirose, E. Tamura, T. Shiraishi, J. Mack, N. Kobayashi, S. Mori, T. Okujima, and M. Takase
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Journal Title
Chemistry, a European Journal
Volume: 26
Pages: 5701-5708
DOI
Peer Reviewed
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