2019 Fiscal Year Research-status Report
弱い分子間相互作用のみからなる分子性細孔の可逆な構造変化による機能創出
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18K05080
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| Research Institution | Osaka University |
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Principal Investigator |
燒山 佑美 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60636819)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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| Keywords | 機能性分子結晶 / 刺激応答性 / インダンジオン二量体 / 結晶構造変化 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では特異なX字型構造を有する刺激応答性有機分子を用い、弱い分子間相互作用を利用することで、既存の精密設計可能な多孔性材料に潜在的に潜む「構造の硬さ・脆さ」とは真逆の「構造的柔軟性」を導入した多孔性分子結晶を合成し、これらを基盤とした多種多様な機能を示す「柔らかい分子結晶材料」の創出を目指す。
今年度は、各種インダンジオン二量体が示す機能の解明と、ねじれX字型構造を有する新たな分子骨格としてのベンゾチオフェノン二量体の設計、合成とパッキング評価を行った。
加熱によって色及び結晶外形変化を示すインダンジオンのピリジン置換体について、約180 ℃、次いで室温でX線結晶構造解析を行った結果、結合の開裂にかかるSp3炭素間距離が、高温時に有意に伸張、冷却により収縮することを見いだした。引き続き、高温ESR測定によるスピンの生成・変化を評価し、加熱による分子構造変化とその電子状態の詳細を明らかにすべく検討を続ける。
また、ピリミジン誘導体については、アルコール系溶媒中で加熱の上で結晶化させることで、分子内C-C結合が開裂して生成する開殻種を経由して生じたとみられる新規な縮環化合物が単結晶として得られた。現在その性質や生成メカニズムについて詳細に検討を行っている。
さらに、分子主骨格をベンゾチオフェノン二量体へと拡張し、置換基としてγ-ピリジル基を導入した分子を合成した。これまでに合成してきたインダンジオン二量体とは異なり、結晶化溶媒の極性によらず、各分子がタイトに相互作用したパッキングを有する結晶のみを与えた。また興味深いことに、芳香族系の溶媒を用い、加熱過程を経て結晶化を行うと、用いた溶媒と反応したとみられる縮環化合物が再現性良く得られた。この反応生成物は、通常の反応条件では全く観測されず、結晶化過程を経た時でのみ現在確認されており、その生成メカニズムに興味が持たれる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、インダンジオン骨格を主骨格として用いることで、特にγ-ピリジル誘導体における種々の溶媒包接結晶の作成や内部ゲスト溶媒の出し入れに伴う構造変化に加え、熱や光といった刺激印加による応答性とその評価について重点的に検討を行ってきた。その結果、溶媒の構造、極性がゲスト取り込み挙動におおきく影響していることを見いだすことができた。また、熱添加によりインダンジオン骨格内の炭素-炭素結合が室温下に比べ伸張していることから、加熱による結合とそれにかかる電子状態の変化に興味が持たれる。γ-ピリジル基以外にも各種置換基の導入を行うことで、溶媒を包接した擬細孔構造の構築にかかる構造的要請を明らかにした。一方、今年度新たに検討したねじれX字型ベンゾチオフェノン二量体では、上記の構造的要請を満たすにもかかわらず、同様の擬細孔構造が得られなかったことは、最終的なパッキング構造に影響する別の何らかの因子が存在することを表しており、本研究の更なる展開を促す重要な知見である。
以上のように、前年度までに得られた結果を元に、今年度は新たな分子骨格への展開をはじめ、ねじれX字型構造を有する分子の結晶状態構造・機能について当初の研究計画よりも多くの知見が得られたことから、本研究は順調に進行していると判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度は今年度までに得られた知見を元に、インダンジオン系については加熱時における構造及び電子状態の詳細について、高温ESR及び量子化学計算を用い詳細に検討する。加えて、外部刺激として光を利用し、同様にその電子的・構造的性質をin situでの結晶構造解析およびESR測定を始め、実験・理論の両面から明らかにする。また、インダンジオン系の擬細孔結晶については内部ゲスト分子の種類や量を制御することができることから、そのガス吸着特性について内部ゲストの違いに伴う変化を明らかにしていきたい。また、新たに検討を始めたベンゾチオフェノン骨格を主骨格とするねじれX字型分子における分解・縮環化合物生成プロセスについても、溶液系でのコントロール実験条件や結晶化条件の更なる拡張により、何らかの手がかりをつかみ、明らかにしていきたい。
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| Causes of Carryover |
今年度は産休・育休のために研究活動を停止していた時期があったため、その期間中に使用されるはずであった予算が残ることとなった。この残予算については、次年度の助成金と併せて、有機合成試薬等の消耗品および実験に必要な真空ポンプなどの少額備品の購入に充てる予定である。
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