2020 Fiscal Year Annual Research Report
NMR analysis based on MO theory aiming the evaluation of properties in materials with the developments
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18K05081
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
林 聡子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (00294306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 和郎 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (80110807) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | NMR化学シフト / 結合定数 / 量子化学計算 / 分子軌道法 / 相対論効果 / 有機典型元素化合物 / Slater-type原子軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
核磁気共鳴法(NMR)法は、物質科学の研究において極めて重要な手段である。有機化合物を扱う実験室では、NMR測定は日常頻繁に行われ、化学シフトおよび結合定数を中心に解析され、化合物の同定や構造解析、反応追跡等に役立てている。NMRデータは、極めて重要な情報を多く含んでいるが、物質の機能評価や開発に用いられることは少ない。NMR化学シフト(δ値)や結合定数(J値)が本質的に磁気的現象によるため、実験化学者にはその詳細な解釈が複雑かつ難解だからである。また高周期元素のNMRは、相対論効果のため解釈がさらに難解となる。本研究の目的は、難解な磁気的現象の詳細な解析は避け、物質の機能評価や開発に役立つ、より簡便で直感的にも理解し易いNMR解析法、具体的にはNMRデータの起源を各分子軌道に求めた方法の適応範囲を広げることである。 2020年度は、前年度同様、「分子軌道法に基づくδ値とJ値の解析法の発展(適応範囲拡大)と視覚化」に取り組んだ。δ値やJ値は有機元素化合物の構造決定や結合や相互作用の様式を解析する上できわめて重要な知見をもたらす。J値は反磁性項、常磁性項、spin-dipolar項、Fermi contact項の和である。一般にJ値はFermi contact項の寄与が大きいとされているが、この予想に反して常磁性スピン-軌道相互作用(常磁性項)によって支配される系も見出している。さらに相対論効果は原子番号の4乗に比例するので、相対論効果をきちんと加味して、計算値を算出する方法をADF2019プログラム(Slater-typeの原子軌道)を用いて吟味した。δ値とJ値の成分を各分子軌道法に基づいて表す手法は確立できたが、理解し易い視覚化の手法にはまだまだ課題が残った。また構造最適化とδ値およびJ値算出の計算レベル、基底関数の関係を検討する課題は、未だ完全には解決できなかった。
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