2019 Fiscal Year Research-status Report
特異な分子構造を基盤とした刺激応答固体発光性有機色素の創製
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18K05084
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
池田 俊明 東海大学, 理学部, 講師 (40560363)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発光性有機色素 / 刺激応答性発光 / 固体発光 / 円偏光発光 / ナフタレンイミド / 有機白金錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、発光性有機色素を用いた刺激応答性固体発光および固体円偏光発光の実現である。本年度はこの目的の達成に向けて、新規発光性有機色素の合成とその光学特性について検討した。 π共役系色素の凝集状態における高効率発光を実現するためには、π―πスタッキングを抑制し濃度消光を避けることが求められる。そのためには、分子全体として非平面となる構造をもった発光性有機色素が望ましい。昨年度の研究において、我々はベンゼン環の1,3,5位にナフタレンビスイミドを導入した分子を合成した。本年度は、この分子の効率的な合成ルートの確率および光学特性の検討を行った。合成においては、反応条件の最適化を行い、目的化合物を70%以上という高効率で得られた。この分子は、クロロホルムなどの溶液中では孤立した分子としての光学特性をもち、ナフタレンイミド由来の強い発光を示した。ナフタレンイミドは凝集状態では濃度消光のために発光が弱くなるが、この分子は凝集することで発光が強くなることが明らかとなった。これは凝集状態においてπ―πスタッキングしておらず、分子の熱運動が抑制されたためであると考えられる。今後は、NMRやX線結晶構造解析などによって集合構造を明らかにすることを計画している。また、固体状態を含む様々な状態での発光挙動を詳しく検討する。 本研究の目的の一つである固体円偏光発光の実現のためには、光学活性な集合体を構築する必要がある。このような光学活性な集合体として、今回合成したベンゼン環の1,3,5位にナフタレンビスイミドを導入した分子や、昨年度から合成を検討している有機白金錯体など、プロペラ構造をもった分子が有用である。今後は、光学活性なプロペラ型分子の合成を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、発光性有機色素を用いた刺激応答性固体発光および固体円偏光発光の実現である。そのためには、これらの性質を実現するための骨格をもった新しい発光性有機色素の開発が必須である。すでに、我々は一つのベンゼン環に三つの有機色素(ナフタレンイミド)が置換した新規発光性有機色素の合成に成功したが、この骨格および合成方法は他の色素の合成においても応用可能な汎用性の高い方法である。また、今回合成した新規有機色素は凝集状態において高い発光効率を有することが明らかとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は発光性有機色素を用いた刺激応答性固体発光および固体円偏光発光の実現である。そのためには、特異な骨格をもった新規発光性有機色素の開発が必須である。二年目までに有用な骨格であるベンゼン環に三つの色素が置換した骨格の高効率な合成法の開発に成功した。今後は、この合成法を応用して、様々な有機色素を置換した発光性色素の合成を進める。また、有機白金錯体についても引き続き合成を行う。 また、二年目において合成した発光性有機色素の光学特性について検討を行った。具体的には、溶液中での孤立および凝集状態について紫外可視吸収および発光スペクトルの測定を行った。その結果、今回合成した分子の優れた発光特性が明らかとなった。今後は、固体状態での光学特性および刺激応答性、円偏光発光性について検討を行う。さらに、固体での性質を明らかにするために単結晶の作成を行い、X線結晶構造解析によって固体中での分子の配列構造についての知見を得る。この結果と光物性を合わせて固体中での分子の挙動を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究代表者が本研究課題を申請した時点では広島大学大学院理学研究科の所属であったが、2018年4月より東海大学理学部化学科へ異動した。東海大学理学部化学科においては新しい研究室を主催しており、当初の研究計画と異なり謝金、旅費、その他の経費は使用しなかった。また、消耗品については使用したが、当初の計画よりも少ない額であった。 2020年度からは有機合成用の試薬類として消耗品を使用するとともに、機器分析のために謝金、得られた成果の発表のための旅費やその他の経費(英文校閲)を使用する計画である。また、本研究においては高速液体クロマトグラフィーの使用が必要である。広島大学においては既に所有している機器を使用可能であったが、東海大学においては使用可能な機器がないため、高速液体クロマトグラフィーを購入する計画である。
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Research Products
(6 results)