2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05090
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
津留崎 陽大 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40623848)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ホスフィンドリジン / 三次元π共役化合物 / リン / 閉環メタセシス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、ホスフィンドリジン誘導体の初めての例であるジベンゾ[b,e]ホスフィンドリジン1の合成に成功し、その構造・性質・リン原子まわりの反転挙動を明らかにした。本年度は、1の合成法を活用して、ベンゼン環の縮環位置が異なる構造異性体2 (ジベンゾ[b,g]ホスフィンドリジン)およびナフタレン縮環ホスフィンドリジン3,4の合成を行った(3と4はベンゼン環の縮環部位が異なる異性体)。X線構造解析の結果、化合物3, 4は1と同様の湾曲構造をとっていたのに対し、化合物2ではベンゾホスホール環ともう一方のベンゼン環がねじれた構造をとっていることが分かった。紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、化合物2の吸収波形は化合物1とは大きく異なっていた。化合物2の最長極大波長は380 nmであり、化合物1 (397 nm)と比較して短波長シフトしていた。理論計算の結果、ホスフィンドリジンの六員環骨格に存在するオレフィンが、分子全体のπ系へ大きな影響を与えていることが分かった。化合物3,4では、1,2と比較して大幅な長波長シフト(434-437 nm)が観測され、ベンゼン環の縮環による共役拡張効果が見られた。一方で、化合物3,4の異性体間では顕著な違いは観測されなかった。CVを測定したところ、酸化および還元電位は、+1.24 V, -1.68 V(化合物2)、+1.12 V, -1.54 V (化合物3)、+1.04 V, -1.64 V(化合物4)であった。以上の結果から、ベンゼン環の縮環位置・縮環数の違いによってホスフィンドリジン骨格の電子状態が大きく変化することが明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに確立したジベンゾ[b,e]ホスフィンドリジンの合成手法(閉環メタセシス反応)を活用して、その構造異性体であるジベンゾ[b,g]ホスフィンドリジンやナフタレン縮環ホスフィンドリジン誘導体の合成を達成することができた。また、その構造と性質を明らかにすることにより、ホスフィンドリジン骨格への芳香環(ベンゼン環・ナフタレン環)の縮環が共役拡張効果に与える影響を明らかにすることができた。これらの進展状況は、おおむね当初の研究計画どおりである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き他のπ共役拡張類縁体へと展開する。チオフェン環やピリジン環などの複素環を導入したホスフィンドリジン誘導体、置換基を導入したホスフィンドリジン誘導体、ホスフィンドリジン骨格を複数有する共役拡張分子などの合成に取り組む。また、ホスフィンドリジン誘導体の反応性の解明も検討する。得られた化合物については、これまでと同様に、構造・性質を解明するとともに化合物1-4との比較なども検討する予定である。
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Causes of Carryover |
所属研究室にて並行している研究に対しても科研費等の研究資金を獲得できたため、本研究課題と共通する試薬やガラス器具等の消耗品に関しては、次年度も利用可能な本予算ではなく他のものから支出した。そのため実支出額は当初の計画より少なくなり次年度使用額が生じている。 本研究課題に支障が出ない範囲で、基金が効率よくできるように適宜判断した上で物品費や旅費等にて使用する予定である。
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