2018 Fiscal Year Research-status Report
芳香環直接構築法を活用するユニークな縮合環芳香族化合物の創製
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18K05097
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 和弘 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (60375607)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機合成 / 面不斉 / 閉環 / 芳香族化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、選択性に特徴を持つ芳香環の新たな直接構築法を開発してきた。本研究ではこれらの基盤技術を応用することで、これまでにない機能を有する縮合環芳香族化合物の新開発を目指した。具体的には、1) 面性不斉ピリジン触媒の実践的合成法の開発と応用。2) 立体選択的合成に立脚したフェロセン含有光学活性ヘリセンの合成。3) 1,3,5-トリス-1-フェニルエテニルベンゼンを鍵中間体とする新規有機材料の開発。4) 内部三環形成新規ピセン合成法を利用する特殊ピセンの合成の四つのテーマを軸に研究を展開している。 本年度は、特に1)の研究課題で優れた研究成果を得ることができた。我々はこれまでにメタセシス反応を利用するFerroco-DAAPのエナンチオ選択的合成法の開発に成功している。本手法では、フェロセン骨格を有するアルデヒドから誘導したキラルアセタールを出発原料として、ジアステレオ選択的に面不斉をコントロールしながらピリジン環を構築していくというアプローチを採用した。しかしながら一方で、本手法は合成ルートが長く、嵩高い官能基を導入できない等の欠点を抱えていた。そこで本研究で、ごく最近我々が開発することに成功した全く新しいピリジン環形成手法を応用することで、前手法の大幅な短工程化と一般化に取り組んだ結果、狙い通りに優れたFerroco-DAAPの汎用的合成手法を開発することができた。 また、本年度は、3)の研究課題においても良好な研究成果を得た。 開発ターゲットとしている新規有機材料のコアパーツとなるチオフェン環の新たな合成法を見いだすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度新たに開発したFerroco-DAAPの合成法を利用すれば、効率的に短工程で目的物にアクセスすることができる。本合成法は、これまでに我々が開発した合成法の利点であった1) 光学分割ではなく、立体選択的な手法により触媒を得る、2)合成の最終工程でピリジン環の4位に様々なジアルキルアミノ基の導入を行うことで迅速に多様な類縁体を合成する、という特徴をそのまま継承しているが、これに加えて、これまでの合成法では達成することのできなかったペンタフェニル体の短工程合成が可能となっており、格段にその汎用性が向上している。さらに、今回我々は、新たな合成法を利用することで全く新規の面不斉メタロセンDAAPとなるペンタベンジル体やシマントレン体の開発にも成功した。以上の成果は、研究開始当初に期待していた通りであったが、現在、この結果を受けて、本合成手法のさらなる一般化にも取り組んでいる。また、ピリジン環以外の合成ターゲットとしては、 1,3,5-トリス-1-フェニルエテニルベンゼンを鍵中間体とする新規有機材料の開発研究において、コアとなるチオフェン環の新しい合成法を見いだすことに成功し、良好な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに開発したピリジン環合成法を応用して、様々な有用物質の開発を行う。具体的には、医薬、農薬の母骨格としてよく知られているキノリン類の合成を行う。また、チオフェン環合成法に関しては、一般性の検証を行う研究と並行して、本手法ならではと言えるチオフェン環が連結した新規有機材料の合成研究へと展開を図りたい。新たな機能を持つ物質の創出と新たな骨格構築法の開発は表裏一体の関係にある。本研究により、独自の合成方法論を利用するならではのユニークな物質の開発を目指す。
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Research Products
(8 results)