2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies of asymmetric Pictet-Spengler reaction and total synthesis of d-tubocurarine
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18K05104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上西 潤一 大阪大学, 薬学研究科, 招へい教授 (50167285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Tetrahydroisoquinoline / Aminoarylation / Reaction of imine / C-C-bond formation / Three component reaction |
Outline of Annual Research Achievements |
d-Tubocurarineの基本骨格である6位および8位にフェノール性水酸基を有する1位置換テトラヒドロイソキノリン環の構築に関して、Pictet-Spengler反応を用いる実践的な検討を行ってきた。従来この反応では、中間に生成するイミンが酸触媒により活性化され、生成したイミニウムイオンを経由して分子内芳香族求電子置換反応が起きるという考え方が定説となっていたが、実は基質によると酸触媒が存在しなくとも起きるということを見出した。 即ち、メタノールのほか数種の溶媒中で室温中、環化反応が起き、1位置換テトラヒドロイソキノリン環が構築される。その一般性を証明するために分子間反応を試みた。例えば、一級アミンとアルデヒドにレゾルシノールを加えると、この3分子が結合し、アミノメチル基がレゾルシノールの4位に導入された化合物が一挙に構築された。重要なことは、この反応が室温、中性条件下に無触媒で起きることである。反応の誘導は電子豊富な芳香環が中性イミンに求核付加を起こす現象に起因しており、従来から、アリールメタルのようにマイナスにチャージした芳香環でないと付加が起きないと考えられてきたその常識が打ち破られたことである。実際にレゾルシノールだけでなくインドールのような電子豊富な複素環化合物も基質となりうる。また、一般性において、アルデヒドや一級アミンには幅広い基質許容性が存在する。 この反応条件を実際のd-Tubocurarineの合成に用いるユニットに適用したところ、室温数時間という温和な条件下に1位置換テトラヒドロイソキノリン環が高収率で構築できた。 上記反応は2分子間および3分子間におけるアルデヒドのアミノアリレーション反応と定義される。本反応が極めて温和な中性条件下に起きることは、芳香環を有するアミン化合物の生体内生合成反応の可能性についても暗示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
d-Tubocurarineおよびcurine類の全合成を目指す研究において、思わぬ新しい発見が見出された。そのきっかけはPictet-Spengler反応では酸触媒が必要であると頭から思い込んでいたことが、フェノール性水酸基を有する電子豊富な2-フェニルエチルアミン基質では予想以上に反応性が高く酸触媒が不必要である事実が判明した事による。この反応では、分子内イミンへの芳香族フェノール化合物の環化における現象だけではなく、分子間、すなわちアルデヒドと第1級アミンおよび電子豊富なフェノール性芳香族化合物の3分子でも起きることを見出した。反応の本質はイミンへのアリール化反応にあり、室温、中性条件下に溶媒としてアルコール性溶媒のほかアセトニトリルやDMSO中でも進行する。また、インドール類も基質になりその3位でイミン炭素に付加を起こす。 コロナウイルス感染予防における研究自粛に加えて、今回見出された反応は学術的に非常に重要と考えられその解明に注力した結果、本来の研究課題の進捗は遅れている。もちろんこの反応の追求が、本申請におけるd-Tubocurarineの全合成にも重要なプロセスであることは間違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
中性緩和な条件下に3分子間でのアルデヒドへのアミノアリール化反応が可能になり、またアルデヒドへの2-フェネチルアミン基質においても、同条件下にテトラヒドロイソキノリン環の構築が可能になった。そこで残る1年間、研究期間の制約もあり、Tubocurarineおよびcurine類の基本骨格のラセミ体全合成を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染予防における研究自粛のため予定していた年度末消費が実行できなかったため
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Research Products
(2 results)