2018 Fiscal Year Research-status Report
酸性度をもたない飽和炭素-水素結合を起点とするアルキル化反応
Project/Area Number |
18K05107
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上條 真 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00359548)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | C-H官能基化 / ヘテロ芳香環導入 / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物の合成を高効率化しうる反応として、「酸性度をもたない飽和炭素-水素 [C(sp3)-H] 結合を起点とするアルキル化」に着目し、新しい分子変換法の創出を目指し研究を実施した。一般的に酸性度をもたないCーH結合は反応性が低く、官能基化は困難であるが、我々は光励起ケトンを作用させると、これら低反応性CーH結合を温和な条件下、ラジカル切断できることを見出した。本工程を鍵とするCーH結合の官能基化をさらに展開すべく、導入可能な炭素ユニットとして、医薬品に高頻度で含まれるヘテロ芳香環に着目し、その一工程導入法の確立に取り組んだ。 我々が既に公表している、CーH結合に対するピリミジン環の直接導入法を参考として、炭素ユニット前駆体の探索を行った。その結果、スルホニル化されたアゾールがヘテロ芳香環前駆体として機能することが新たに判明した。また、本アゾール化反応においては、CーH結合の切断を担う芳香族ケトンとして、ベンゾフェノンのみならず、ベンゾイルピリジンが高い反応性を示すことが明らかとなった。室温・中性の非常に温和な反応条件下、光照射しつつ反応溶液を攪拌するのみで、テトラヒドロフランのような出発物に一工程でアゾール環を導入することに成功した。反応効率の著しい低下が認められるものの、CーH結合の切断化剤である芳香族ケトンの触媒化も可能である。これまで、エーテル環や含窒素環の一工程アゾール化への適用が可能であることまで確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未だ、研究成果のとりまとめと論文公表には至ってはいないが、初期課題として掲げたヘテロ芳香環導入に成功しており、その反応条件などの洗い出しも既に完了している。2019年度の前半には、該当反応の適用範囲の詳細を明らかにし、論文発表を行う予定である。また、ヘテロ芳香環導入反応(CーH結合の置換型官能基化)と平行して、第二課題として掲げているCーH結合への付加反応を基盤とした官能基化の端緒もつかんでいる。3年間の研究プロジェクトの初年度であることを考慮すると、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
創薬研究において重要な構造素子であるヘテロ芳香環の導入法を確立し、この新たな手法を論文としてまとめ発表することにより公表する。さらに、これまで開発してきた置換型のC-H官能基化とは反応の形式が全く異なる、付加型のC-H官能基化の創出に取り組む。置換型の反応では脱離基が不可欠であるため、原理的に原子のムダが生じてしまう。一方、付加型の反応では、原料に含まれる全ての原子が生成物に取り組まれるため、原子のムダが発生しない、理想的な究極の環境調和型反応といえる。
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[Book] 有機分子触媒の開発と工業利用2018
Author(s)
秋山隆彦(監修),寺田眞浩,山中正浩,浦口大輔,石原一彰,丸岡啓二,藤岡弘道,萬代大樹,矢内光,竹本佳司,川端猛夫,長澤和夫,鳴海哲夫,市川淳士,根東義則,柴富一孝,工藤一秋,矢島知子,上條真,笹井宏明,椎名勇,林雄二郎,岩渕好治,砂塚敏明,佐藤敏文,濱島義隆,石川勇人,畑山範,池本哲哉,金田岳志(他)
Total Pages
333
Publisher
シーエムシー出版
ISBN
978-4-7813-1323-8
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