2018 Fiscal Year Research-status Report
キラル情報転写伝達型不斉配位子の開発と触媒反応への利用
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18K05117
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三野 孝 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40302533)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | P,オレフィン型不斉配位子 / 擬似軸不斉 / 炭素-窒素結合軸不斉 / パラジウム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、 容易に軸が回転するため軸不斉を持たない化合物において、分子内に中心不斉を持つキラル部位を配置し、このキラル情報が、 擬似軸不斉部分に転写され、さらにその不斉情報がフレキシブルな置換基を介して伝達されることで効果的な不斉環境が構築できるキラル情報転写伝達型不斉配位子の開発を中心に行う。さらに、このような配位子を利用することで初めて達成できる触媒的不斉反応を合わせて開発する。 本年度は、キラル情報転写伝達型不斉配位子の開発を行うにあたり、軸不斉部分が触媒的不斉反応にどのような影響を与えるのかを明らかにするため、炭素-窒素結合軸部位のラセミ化がほとんど進行しない 1-アダマンチル基とシンナミル基を有するP,オレフィン型不斉配位子を合成した。さらにパラジウム触媒を用いたマロン酸誘導体を求核剤とする不斉アリル位アルキル化反応に利用可能であるかについて検討した。その結果、最高90%eeの不斉収率で目的物が得られることを明らかにした。次に、1-アダマンチル基を2-アダマンチル基に置き換えたP,オレフィン型不斉配位子の開発を検討した。該当化合物を合成したところ、第2級アルキル基である2-アダマンチル基は1-アダマンチル基よりも立体障害が小さいため、軸不斉部位のラセミ化が著しく速くなった。しかしながら光学活性体として取り扱うことが可能であり、パラジウム触媒を用いたインドール誘導体を求核剤とする不斉アリル位アルキル化反応の不斉配位子として利用した結果、最高96%eeの不斉収率で目的物が得られることを明らかにした。さらに本研究の主題であるキラルアミンを不斉源とする疑似軸不斉を有するP,オレフィン型不斉配位子の開発を行うことにより、容易に軸が回転するため軸不斉を持たないものの擬似軸不斉が発現し効果的に反応場の不斉環境を構築できる可能性があることを示唆する結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、該当研究に関する学術論文を4報報告することができ、概ね研究計画が順調に進展していると評価できた。また疑似軸不斉を有するP,オレフィン型不斉配位子の開発についても着実に進展しており、該当評価区分は妥当であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度見出したキラルアミンを不斉源とする疑似軸不斉を有するP,オレフィン型不斉配位子の開発を積極的に行うことにより、容易に軸が回転するため軸不斉を持たないものの、擬似軸不斉が発現し効果的に反応場の不斉環境を構築できる不斉配位子の概念を確立する。特に二座配位子の設計指針として、配位部位であるシンナミル基を他の官能基、例えばシンナモイル基に変化させたP,オレフィン型化合物を設計・合成することでキラル情報転写伝達型不斉配位子の適用範囲の拡大を狙う。
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Causes of Carryover |
該当年度において、順調に研究成果が出たため、予定していた試薬・ガラス器具等の物品費の支出が抑えられた一方、分析依頼料、成果発表のための旅費、英語学術論文投稿のための英文添削依頼費等の経費が予想以上に支出された。以上の結果として数万円の当初使用予定額との差異が生じたが、概ね予定通りの支出であったと考えられる。 予定額との差異は翌年度分の助成金と合わせて、研究を推進するのための試薬・ガラス器具等の物品費として使用する予定である。
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Research Products
(12 results)