2019 Fiscal Year Research-status Report
多置換 D-A シクロプロパンの不斉合成と環開裂を鍵とする高選択的有機合成
Project/Area Number |
18K05120
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西井 良典 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (40332259)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多置換シクロプロパン / 不斉合成 / 有機分子触媒 / シクロプロパン化 / 開環 / 環化 / 生物活性物質 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロプロパンは炭素最小員環であり、堅固なエクリプス配座を有することから立体制御の足場として活用できる。また、シクロプロパン環開裂を伴う骨格変換反応の有用性が注目され、電子供与基と電子求引基をシクロプロパン上に有する活性化されたドナー・アクセプター置換シクロプロパン(D-A シクロプロパンと略す)は有機合成分野において新しい黄金期を迎えている。一方、様々な不斉四級炭素構築法が開発されてきたが、シクロプロパン環にキラル四級炭素を含む多置換シクロプロパンの高選択的合成法はまだ少ない。多置換シクロプロパンの中でも5置換および6置換シクロプロパンの不斉合成は難度が高く未だ達成されていない。特にカルベノイドを用いる不斉シクロプロパン化は4置換以上のシクロプロパンの合成には適していないこともわかってきた。本年度は有機分子触媒を用いる不斉シクロプロパン化により合成した4置換シクロプロパン環上の置換反応を用いる方法により5置換シクロプロパンの高立体選択的不斉合成を達成した。また全く別法での5置換シクロプロパンの合成にも成功した。現在、これらの方法を発展させて6置換シクロプロパンの高立体選択的合成法を検討している。合成した5置換シクロプロパンを用いて、オキシホモマイケル反応および開環ー環化反応の適応範囲や反応機構の解明も行っている。一方で、光学活性4置換シクロプロパンを用いる還元的開環反応を鍵反応とする天然物(B型肝炎ウィルスに対する抗ウィルス活性を有する)の両対掌体の不斉全合成を達成し、これらの化合物のウィルス活性試験を国立感染症研究所の研究者と共に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
合成難度が高い5置換以上のシクロプロパンの不斉合成が難航した。しかし、年度末の2月にようやく5置換シクロプロパンの不斉合成を二例ではあるが達成した。これらを発展させて6置換シクロプロパンの不斉合成も検討中であったが、COVID-19 感染対策による実験の停止を余儀なくされているため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した高立体選択的合成法を用いる多様な高度多置換シクロプロパンの合成を行う。また、これらの方法を発展させて6置換シクロプロパンの高立体選択的合成法を行う。同時に、合成した高度多置換シクロプロパンを用いてシクロプロパン環開裂を伴う高立体選択的変換反応を検討する。一方で、我々がこれまでに開発してきた変換反応を鍵反応とする抗腫瘍活性や抗ウィルス活性を有する生物活性有機化合物の不斉全合成を行う。
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Causes of Carryover |
合成難度が高い多置換シクロプロパンの合成が計画よりも難航したことと、COVID-19 感染予防のため3月の実験がほぼできなくなったため。次年度使用額は令和2年度請求額と合わせて実験にかかる消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)