2021 Fiscal Year Research-status Report
多置換 D-A シクロプロパンの不斉合成と環開裂を鍵とする高選択的有機合成
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18K05120
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西井 良典 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (40332259)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シクロプロパン / 不斉合成 / 開環 / 環化 / 生物活性 / リグナン / 中心不斉 / 軸不斉 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) D-A シクロプロパンの不斉転写開環ー環化反応により得られる二つの中心不斉を有するアリールジヒドロナフタレンから軸不斉の身を有するアリールナフタレンへの DDQ 酸化による不斉変換反応を見出した。この反応における、アリール基上のオルト位置換基の有効半径と軸不斉における ee との関係についても詳細に調べた。その結果、ベンジロキシ基の場合には、低温下で高い ee での不斉変換を達成した。[T. Saito, Y. Shimizu, Y. Araki, Y. Ohgami, Y. Kitazawa, Y. Nishii, Eur. J. Org. Chem. 2022, e202101213. (DOI: org/10.1002/ejoc.202101213)]
2) D-A シクロプロパンの高立体選択的かつ高位置選択的な還元的開環反応を開発し、この反応を鍵反応として、抗 B 型肝炎ウィルス活性を有するリグナン天然物 (-)-ニランシン及びその対掌体 (+)-ニランシンの不斉合成を達成した。合成した対掌体のB 型肝炎ウィルス及びインフルエンザに対する活性試験を行なった。生物活性試験の結果から、B 型肝炎ウィルスに対しては両対掌体間で活性の差はなかったが、インフルエンザウィルスに対しては (-)-ニランシンが抗ウィルス活性を示し、(+)-ニランシンには活性が認められなかった。すなわち、B 型肝炎ウィルスはニランシンのキラル中心の構造ではなくアキラルな芳香族環周辺の構造が、インフルエンザウィルスではキラル中心の構造が活性サイトになっていると考えられ、学術的に重要な知見を得たと言える。[R. Ota, D. Karasawa, M. Oshima, K. Watashi, N. Shimasaki, Y. Nishii, RSC Adv. 2022, 12, 4635. (DOI: 10.1039/d2ra00499b)]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍対策を実施しながら実験を行うため、同時に居合わせられる実験室の定員を減らす必要があったため。研究室の研究員の一人当たりの実験時間の短縮があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は2報の論文化が達成できたが、これらと同様に D-A シクロプロパンの不斉転写開環ー環化反応の反応機構も詳細に明らかになりつつあるので、さらなる3不斉中心を有する生物活性リグナン(抗癌活性)の不斉合成と合わせてフルペーパー化を急ぎたい。一方で、これらの成果をさらに発展させて、新しいトピックスとなる活性化シクロプロパンの新規反応の開発に着手する。すでに、いくつかのポジティブデータを得ている。
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Causes of Carryover |
コロナ対策のため実験量が減少した。今年度は、延長した期間のデータをもとに当初の最終年度の計画書に従って研究を遂行する。
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Research Products
(2 results)