2018 Fiscal Year Research-status Report
有機硫黄化合物の特性を利用する新規な可視光多置換ヘテロアレーン合成法の開発
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18K05121
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
仙石 哲也 静岡大学, 工学部, 准教授 (70451680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
依田 秀実 静岡大学, 工学部, 教授 (20201072)
高橋 雅樹 静岡大学, 工学部, 教授 (30313935)
藤本 圭佑 静岡大学, 工学部, 助教 (10824542)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機硫黄化合物 / 可視光酸化還元触媒 / 二量化 / 脱硫 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボニル基のα位にスルフィドを導入したオキシインドール誘導体の可視光酸化還元触媒共存下での二量化反応について調査した。可視光酸化還元触媒を用い青色LED光照射下、大気中反応を試みることで、効率的に目的の二量体を与えることが明らかとなった。さらに、収率の向上を目指し、フェニルチオ基をベンゾチアゾール基で置換することを試みたが、生成物が極めて不安定であったため、これを断念した。一方、本二量化反応の基質汎用性について調査したところ、環状イミドや鎖状カルボニル化合物(エステル、アミド、およびケトンのカルボニル基)のα位にフェニルチオ基を導入した化合物では、いずれも目的の二量体を与えず、ほとんど基質原料が回収された。このことから、先の二量化反応は硫黄官能基だけでなく基質構造の寄与も大きいことが判明した。他方、硫黄官能基の脱硫置換反応を利用する新しい炭素-炭素結合形成の検討においては、ベンジル位にフェニルスルフィドを導入した基質を用いた場合、可視光酸化還元触媒反応条件下では酸化反応が進行して生成したスルホン体や脱硫に伴って酸素または水が付加したアルデヒドが主として生成し、炭素求核剤との連結反応は進行しなかった。一方、同スルフィドを酸化して得たスルホンに対して可視光酸化還元触媒反応を試みたところ、オレフィン体と反応させることで、スルホンの脱離とともにアルケニル化が進行した生成物を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルボニル基のα位にスルフィドを導入したオキシインドール誘導体に対し、触媒としてRu(bpy)3Cl2やEosin Yを用い、460 nmの青色LED光照射下、大気中反応を試みると目的の反応が効率よく進行した。この結果をうけ、N-メチルスクシンイミドのカルボニル基のα位にフェニルチオ基を導入した化合物を調製し、先と同様の条件下にて反応を試みたものの、目的の二量化生成物は全く得られなかった。また、フェニル酢酸メチルやそのアミド誘導体、アセトフェノンに対しフェニルチオ基を導入した鎖状のスルフィド体も同様に調製し、反応を試みたが、いずれの場合もスルフィドの酸化によりスルホンやスルホキシドが生成するだけで、二量化反応は進行しなかった。さらに、酸化反応の影響を受けないスルホンを基質とした場合においても、反応は進行しなかったことから、先の二量化反応は硫黄官能基だけでなく基質構造の寄与も大きく、本反応の基質汎用性の獲得には、基質構造を更に改良する必要があることを明らかとした。 また、前述の反応開発と並行して、脱硫を伴う置換反応も検討した。ベンジル位にフェニルスルフィドを導入した基質とマロン酸ジエチルやアセト酢酸エチルなどの求核試薬の当量混合物を可視光酸化還元触媒共存下、青色LEDを照射して攪拌したところ、スルフィドが酸化されて生じたスルホキシドや脱硫後に酸素または水が付加して精製したと考えられるアルデヒドが主生成物として得られた。一方、ジフェニルエチレンとの反応では脱硫とともにアルキニル化が進行した化合物が得られた。これらは、スルホンまたはスルフィドを利用することで脱硫を伴う新たな官能基導入が可能であることを示しており、今後の反応開発において極めて重要な成果である。このことから、当該研究は概ね順調に進展したものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現状において、オキシインドール誘導体の二量化の反応条件は確立したが、他の基質への適応が適っていない。次年度以降は二量化の汎用性の獲得を目指した基質検討を進めるため、異なる硫黄官能基の導入を検討する。また、新たに見出すことが出来た脱硫を伴う炭素-炭素結合形成反応について詳細を調査するため、カップリング対象をスクリーニングする。併せて、反応メカニズムを明らかにする目的で、基質の電気化学特性の調査を進める。
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Research Products
(11 results)