2019 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウムカルベノイドの求電子的な反応性を活用する合成反応の開発
Project/Area Number |
18K05129
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
木村 力 東京理科大学, 理学部第二部化学科, 講師 (40452164)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マグネシウムカルベノイド / 有機金属化学 / 求核置換反応 / 環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、1-クロロシクロプロピルp-トリルスルホキシドから発生させたシクロプロピルマグネシウムカルベノイドとGrignard試薬の求核置換反応および反応の結果生じる有機マグネシウム中間体と求電子剤の反応について研究した。通常シクロプロパン環上での求核置換反応は起こりにくいが、シクロプロピルマグネシウムカルベノイドとGrignard試薬の求核置換反応は進行し、Grignard試薬が導入されたシクロプロパンが生成した。また、Grignard試薬を反応させた後、続けてハロゲン化アルキルや塩化アシルといった求電子剤を銅(I)触媒存在下で反応させると、シクロプロパン環の1つの炭素にGrignard試薬と求電子剤が導入された多置換シクロプロパンが中程度の収率で生成した。求核置換の反応機構を解明するために、DFT計算を用いてマグネサート錯体の1,2-転位を経由する反応の遷移状態を探索し活性化エネルギーを見積もるとともにIRC計算を行った。 また、当該年度では、マグネシウムカルベノイドの両親剤的反応性を利用した2種類の環状化合物の合成について研究した。1-クロロアルキルp-トリルスルホキシドとGrignard試薬から発生させたマグネシウムカルベノイドをアルデヒドやケトンと反応させると、マグネシウムカルベノイドは求核的にはたらきクロロヒドリンが生成した。クロロヒドリンを塩基で処理するとエポキシドが得られた。一方、ケトンを塩基で脱プロトン化すると生じるエノラートとマグネシウムカルベノイドを反応させるとシクロプロパノールが生成した。この反応では、マグネシウムカルベノイドが求電子的にはたらき、一旦3-オキソアルキルマグネシウム中間体が生成した後分子内求核付加が起こりシクロプロパノールが生成したとみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、シクロプロピルマグネシウムカルベノイドの特異な反応性を利用して多置換シクロプロパンの合成法を確立することができた。多置換シクロプロパンを合成する際、従来は必要となる置換基を予め基質に導入しておきシクロプロパン環を構築していたが、この反応を利用すれば、シクロプロパン環を形成した後、1つの炭素に2つの置換基を導入することができる。この反応は1-クロロシクロプロピルp-トリルスルホキシド、Grignard試薬、求電子剤の3成分連結反応である。また、当該年度では、マグネシウムカルベノイドの特異な反応性を利用して2種類の環状化合物の合成を達成した。すなわち、マグネシウムカルベノイド、カルボニル化合物、塩基の3成分を異なる順番で反応させることで、エポキシドとシクロプロパノールを作り分けることができた。研究課題は当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初の計画通り順調に進展しているため、次年度も引き続き研究計画に沿って研究を推進する。1-クロロシクロプロピルp-トリルスルホキシド、Grignard試薬、求電子剤を用いた多置換シクロプロパン合成反応の最適条件を探索し収率の向上を図る。また、基質適用範囲について精査する。マグネシウムカルベノイドの両親剤的反応性を利用したエポキシドとシクロプロパノール合成についても、反応条件を最適化するとともに基質適用範囲を調べる。エノラートとマグネシウムカルベノイドの求核置換反応のメカニズムをDFT計算を用いて研究する。
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