2020 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウムカルベノイドの求電子的な反応性を活用する合成反応の開発
Project/Area Number |
18K05129
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
木村 力 東京理科大学, 理学部第二部化学科, 講師 (40452164)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マグネシウムカルベノイド / 有機金属化学 / 求核置換反応 / シクロプロパノール / 増炭反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、α-アリールケトンから調製したリチウムエノラートと1-クロロビニルp-トリルスルホキシドから発生させたマグネシウムアルキリデンカルベノイドの反応について研究した。マグネシウムアルキリデンカルベノイドは、有機マグネシウム種であるにもかかわらず求電子的に反応し得る化学種であるため、リチウムエノラートを作用させると、通常起こらないとされているビニル炭素上での求核置換に続いてγ-オキソ有機マグネシウム中間体の分子内求核付加が起こり2-アルキリデンシクロプロパノールが生成すると期待した。しかし、反応の生成物は、ビニリデンユニットがカルボニル炭素とα炭素の間に挿入されたβ-アリールケトンであった。すなわち、α-アリールケトンに塩基とマグネシウムアルキリデンカルベノイドを作用させると、炭素鎖が一炭素増炭されることがわかった。この増炭ケトンは、期待した求核置換と分子内求核付加に続いて三員環の炭素―炭素結合が開裂することで生成したとみられる。 ケトンから調製したリチウムエノラートと1-クロロアルキルp-トリルスルホキシドから発生させたマグネシウムカルベノイドを反応させるとシクロプロパノールが生成する。この反応の一段階目は、エノラートとマグネシウムカルベノイドの求核置換であるが、負に分極したカルベノイド炭素をアニオン種であるエノラートが攻撃する機構は、有機電子論に基づいて考えると疑問の余地がある。DFT計算を利用して求核置換の遷移状態を探索し活性化エネルギーを見積もるとともにIRC計算を行った。DFT計算の結果は、エノラートとマグネシウムカルベノイドの求核置換がSN2反応であることを示唆していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言により4月7日から5月25日まで約2ヶ月間研究活動の自粛を余儀なくされたが、それ以外の期間は当初の計画通り順調に研究が進展している。マグネシウムカルベノイドの特異な反応性を利用して反応を開発するとともに、DFT計算によりマグネシウムカルベノイドの求電子的反応のメカニズムを解明することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初の計画通り順調に進展しているため、次年度も引き続き研究計画に沿って研究を推進する。マグネシウムカルベノイドとカルボニル化合物の反応の最適条件を探索し収率の向上を図る。また、種々のカルベノイド前駆体やカルボニル化合物を用いて反応の基質適用範囲を調べる。マグネシウムカルベノイドの求電子的な反応性を活用する合成反応に関する一連の研究成果をまとめ、学会発表および論文発表する。
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