2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of rhenium-catalyzed carbon-carbon and carbon-heteroatom bonds
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18K05131
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西山 豊 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30180665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 塁 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (70467512)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レニウム / 触媒反応 / アルコール / 炭素 / 有機ケイ素化合物 / イソキノリン |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子結合の構築法の開発は、有機合成・有機工業化学の大きな進展をもたらすため、多くの化学者によって活発に研究がなされている研究課題の一つである。それらの反応に、アルコールを直接用いることが可能となれば、アルコールが安価かつ容易に入手可能であり、反応後の副生成物が水などであり、環境調和型の反応になると考えられる。しかし、アルコールの水酸基(OH)の脱離能が低く、またアルコールが用いる触媒の中心金属に強く配位するなどするため触媒的に反応を進行させることが困難と考えられている。それゆえに、水酸基を一旦、脱離能の良いハロゲン基などの官能基に変換した後、それらの化合物を反応剤として用い反応を行うのが一般的である。そのために、反応時のハロゲン化合物などの副生などが問題になる。 申請者はレニウム錯体を利用した新規触媒的合成反応を追求する中で、レニウム錯体が従来のルイス酸触媒とは異なったユニークなルイス酸性を示し、様々な斬新かつユニークな炭素‐炭素結合形成反応の触媒となることを明らかにしてきた。レニウム錯体は比較的空気、水等に安定であり、取り扱いが容易である。これらのことから、レニウム錯体を触媒に用いることにより、触媒的な利用が困難と考えられたアルコールを反応剤に用いた反応が、可能になるのではないかと考えた。 そこで本研究では、レニウム錯体の触媒作用に基づく、アルコールを炭素源とする副生成物の少ない環境調和型炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子結合形成反応の追求に取り組み、その結果、アルコールとアルケニルシランのカップリング反応に基づくアルケン、ならびに1,4-ジエン合成、ヒドロシランを用いたアルカンへの還元に成功した。また、(フェニルエチニル)ベンジリデンアミンからのイソキノリンのone-pot合成法を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に引き続き、レニウム錯体の触媒作用に基づく、アルコールを炭素源とする副生成物の少ない環境調和型炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子結合形成反応の追求に取り組んだ。 その結果、本年度は以下の点を明らかにした。 1)レニウム触媒存在下でベンズヒドロールとトリメチルスチニルシランを反応させると、立体特異的にカップリング反応が進行し、内部アルケンが得られるとの知見をすでに見出していた。そこで、本年度は、ベンズヒドロールとトリメチルスチニルシランに基づくアルケン合成の詳細な反応条件の検討を行い、カップリング生成物が収率良く得られる反応条件をまず明らかにした。その後、この反応を様々なアルコール、アルケニルシランを用いた反応へと応用し、様々なアルケンの合成法として利用できることを明らかにした。また、アルコールとしてアリルアルコールを用いアルケニルシランとの反応では、1,4ジエンが得られるとの知見を得た。 2)レニウム触媒存在下、ヒドロシランを用い、アルコールとの反応を行うと、アルコールの脱酸素反応が効率よく進行し、対応するアルカンが得られるとの知見を得た。そこで、様々なヒドロシランを用いるなど、反応条件を詳細に検討し、アルカンが収率良く得られる条件を明らかにした。その後、様々なアルコールの還元反応にこの反応を適用し、レニウム触媒を用いたアルコールとヒドロシランの反応が、様々なアルコールのアルカンへの変換法として利用可能であることを明らかにした。 3)2-(フェニルエチニル)ベンジリデンアミンとニトロメタンをレニウム触媒存在下で反応させると、分子内閉環反応、続いてニトロメタンの付加反応が連続的に起こり、1,2-ジヒドロメタンが得られるのに対し、ニトロメタンを共存させない反応では、分子内閉環、続いて脱プロトン化反応が連続的に起こり、イソキノリンが得られるとの知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
1)アリルシランの替わりビニルシランであるトリメチルスチニルシランを用い、アルコールとの反応をレニウム触媒存在下で行うと、立体特異的に反応が進行し、内部アルケンが得られ、この反応が一般性を有する反応であることを明らかにした。その検討過程において、アルコールにアリルアルコールを用いトリメチルスチニルシランとの反応を行うと、1,4-ジエンが得られるとの知見を得た。そこで、様々なアリルアルコールとアルケニルシランとの反応を行い、1,4-ジエンの一般的な合成法の確立を目指す。 2)レニウム触媒存在下、アルコールと第一級ならびに第二級アミンとの反応を行うと、アミンのN-アルキル化反応が効率よく進行し、アルコールがアミンのN-アルキル化剤として利用できることを2018年度の研究で明らかにした。しかしながら、芳香族アミンを用いた反応では、芳香族環へのアルキル基の導入が優先的に起こり、目的とするN-アルキル化生成物の収率は低かった。2019年はアルコールを用いたアミンのN-アルキル化反応に関する研究を実施できなかったので、本年度は、反応条件を検討し、芳香族アミンのN-アルキル化が効率よく進行する条件を探る。 3)カルボニル化合物をビニルアルコール等価体ととらえ、カルボニル化合物と2-(フェニルエチニル)ベンズアルデヒドとの反応をレニウム触媒存在下で行うと、ベンズアニュレーション反応が生起し、対応する1,3-二置換ナフタレンが得られるとの知見をすでに得ている。そこで、この反応の詳細を検討する。
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Causes of Carryover |
科学研究費基盤研究(C)(一般)の申請時においては、本研究で得られた研究成果を国内、国外の関連学会で発表するため、出張費を計上していた。しかし、申請者らが研究成果を発表する予定にしていた国内の学会の多くが、2019年度は大学のある、大阪府並びに近隣の府県で開催され、学内公務のために夏休み期間中に開催される国外での国際会議への参加を控えた。また、年度末の学会がコロナウイルス感染が広がったため、中止となり学会参加のために必要となる出張費、参加登録費が申請時に考えていたより大幅に減り、所属大学(関西大学)から支給される研究費で十分にまかなうことが出来た。その結果、科学研究費基盤研究(C)(一般)で申請した国内・国外出張費をほとんど使用することなく終わり、残額が生じることとなった。2020年度は、2018,2019年度の残額を含めて執行する予定である。
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Research Products
(3 results)