2020 Fiscal Year Research-status Report
Antenna dye for visible light: synthesis of antiaromatic pentalenes and their application to optical materials
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18K05134
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
折田 明浩 岡山理科大学, 工学部, 教授 (30262033)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピレン / アセチレン / 光触媒 / スルホン / オレフィン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,パイ拡張ピレンを合成し,これを光触媒に用いてエテニルスルホンの脱スルホニル化反応を実施した. 我々は,スルホンとアルデヒドを出発原料として合成したエテニルスルホンをピレン光触媒を用いて脱スルホニル化し,オレフィンへ変換できることをすでに報告した.この反応では,ナトリウムアマルガムを利用することなく脱スルホニル化できることから,環境低負荷型Julia反応として,天然物や有機材料の合成手法として有用である.その一方で,この反応には,1.比較的高エネルギーな紫外光・青色光を利用,2.反応後に光触媒と目的生成物との分離が困難,といった問題点が避けられなかった.そこで本研究では,入手が容易なピレンにフェニルエチニル基を導入し,パイ拡張により緑色光を駆動力として利用可能な光触媒を合成した.また,目的生成物との迅速な分離を実現するとともに,充分な溶解性を本光触媒に付与するために,分岐アルコキシ基を4ヶ所に置換した. 新たに設計・合成したピレン光触媒を用いて,緑色LEDによる光照射下でエテニルスルホンの還元的脱スルホニル化を検討した.期待した通りに反応は速やかに進行し目的のオレフィンが良好な収率で得られた.クロロ基やブロモ基で置換したオレフィンや芳香族複素環を含むオレフィンも得られた.また,パイ拡張したエンイン誘導体も収率良く得られた.本反応では,電子求引基を有するエテニルスルホンが電子供与基を有する誘導体よりも,速やかに還元的脱スルホニル化を受けることを明らかにするとともに,分子軌道計算を用いて,本反応のメカニズムについても詳細に議論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実用的な脱スルホニル化光触媒の実現に向け,現行のペリレン光触媒が抱える問題点を明らかにし,新たな光触媒の設計指針を確立した.また,この指針に沿って,触媒色素を合成した. より具体的には,入手が容易なピレンを母骨格に設定し,これをパイ拡張および官能基化したアルコキシフェニルエチニルピレン誘導体を合成した.続けて,本ピレン誘導体を光触媒に用いて,エテニルスルホンの還元的脱スルホニル化光反応を試みたところ,速やかに脱スルホニル化反応が進行した.また,現行の光触媒では利用できなかった緑色光など低エネルギー光も利用することに成功した.この反応を利用することで現行では達成が困難なエンイン誘導体の合成も迅速に行うことができた.また,分子軌道計算を活用し,本研究から明らかにした反応メカニズムは,スルホン化学だけでなく光触媒化学に新たな展開をもたらした. 本研究で用いたピレン誘導体の合成を通じて,光駆動反応に適したパイ拡張光触媒に設計指針を確立するとともに,光触媒を活用した実用的官能基変換反応に新しい方法論を持ち込むことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,入手が容易なピレンをパイ拡張することで低エネルギーな緑色光で駆動する光触媒の開発に成功した.この触媒を利用することで,芳香族ブタジエンなど光照射に対してやや不安定な化合物の合成に成功した.引き続き,ジエン,トリエン,ビスジエンなど拡張パイ化合物の合成を試みることで,ピレン光触媒を用いた還元的脱スルホニル化反応の可能性を探る. ピレン光触媒の更なるファインチューニングを目指し,フェニル基上のアルコキシ基をオルト,メタ,パラ位に置換した誘導体を合成し,脱スルホニル化光触媒としての有効性を調査する.また,充分な溶解性を担保するために分岐アルコキシ基を用いているが,光学活性なおよびラセミ体のアルコキシ基置換体を合成し,溶解性や反応性など物理的な差異が触媒活性に及ぼす影響についても明らかにする.
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Causes of Carryover |
本研究では,新たに合成したパイ拡張色素を他のパイ化合物とハイブリッド化・コンポジット化することで,新たな機能発現を計画した.その評価方法には,紫外可視吸収スペクトル分析やラマン分光法など本学で実施できる手法だけでなく,収差補正可能な超高分解透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた可視化も含まれる.しかしながら,コロナ禍の影響により,学外装置を利用した電子顕微鏡観察には制約も多く,当初の予定通り研究を遂行することができなかった.そこで,本研究を1年間延長し,学外での分析を実施する.
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Research Products
(7 results)