2018 Fiscal Year Research-status Report
界面構造を制御する多脚配位子を持つ有機金属分子ワイヤーの開発
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18K05139
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 裕也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (90700154)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分子接合 / 多脚配位子 / 分子ワイヤー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では伝導度の揺らぎが少なく、安定な分子接合を形成する多脚配位子を有する分子ワイヤーの開発を目的とした。初年度では既報のルテニウムテトラホスフィンビスアセチリド錯体の配位子を拡張した長脚配位子とそのルテニウム錯体の合成を行った。1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)のフェニル基をパラビフェニル、メタビフェニルならびにメタターフェニルへそれぞれ拡張したキレートホスフィン配位子をそれぞれ合成した。続いて置換活性なRuCl2(PPh3)3を前駆体として、キレートホスフィンとの錯形成を行い、trans-RuCl2L2 (L: キレートホスフィン)で表されるルテニウム錯体の合成を行った。続くAg処理によるクロライドの引き抜きから、カチオン中間体を経由してアセチリドの導入を行ったが、メタターフェニル体では脱クロライド反応の定量的な進行が確認できなかった。X線結晶構造解析の結果からメタターフェニル置換基がClを覆った構造であること、またカチオン中間体形成時では三方両錐形の構造をとるために、ターフェニル置換基同士の立体障害から熱的に不利であることが挙げられる。その他、パラおよびメタビフェニル置換基を有する分子ワイヤーに関しては、問題なくアセチリド配位子を導入することができた。 パラおよびメタビフェニル配位子を持つアセチリド分子ワイヤーに関して、電気化学的、分光学的な調査を行ったところ、dppeを配位子として持つ既報の分子ワイヤーとほぼ同じ結果が得られた。すなわち、配位子の拡張に伴う分子ワイヤーの電子状態やフロンティア軌道の変化がみられないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした多脚配位子を有する分子ワイヤーの合成した。狙い通り、電子状態やフロンティア軌道は既存の分子ワイヤーとほぼ等価であり、多脚配位子が単分子電気伝導度に及ぼす影響を適切に評価可能な系の構築に成功した。したがって、本研究提案は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は単分子電気伝導度計測時に効果的な分子接合を形成すると期待して、置換活性な金錯体の導入を行う。続いて単分子電気伝導度計測を行い、架橋配位子の効果について検討を行う予定である。また単分子電気伝導度計測の結果を踏まえて、新たな多脚配位子の設計を行う。
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Research Products
(20 results)