2020 Fiscal Year Research-status Report
界面構造を制御する多脚配位子を持つ有機金属分子ワイヤーの開発
Project/Area Number |
18K05139
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 裕也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (90700154)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 分子ワイヤー / 単分子電気伝導度 / ラマン分光 / 有機金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は伝導度の揺らぎが少なく、安定な分子接合を形成する多脚配位子を有する分子ワイヤーの開発を目的とする。前年度までに1,2-ビス(アリールホスフィノ)エタンを配位子として持つルテニウムアルキニル分子ワイヤーの合成と単分子電気伝導度計測を行い、嵩高い配位子が伝導度分布を狭小化することが明らかとなった。本年度はさらにこの要因について調査するために、金基板表面のSAM上のラマン分光について解析を行った。電極との接合形成の活性化基となる金錯体を修飾した分子ワイヤーのジクロロメタン溶液を金基板上へ浸漬した。基板を洗浄後に顕微ラマン分光装置にて測定を行なった。電極と接合するアセチレンのピークはバルクサンプルを測定した結果と比べて顕著に低端数シフトし、最大で200 cm-1を超えた。加えて1800-2200cm-1の領域に幅広く複数のピークが観測された。これは二つのブタジイン鎖の一方が電極と結合したことにより電荷移動相互作用したブタジインとしていない部位がそれぞれ観測されたものと考えられる。興味深いことに側鎖の立体が嵩高くなるにつれてラマンピークの形状がより鋭くなり、一部のピークが消失した。これは嵩高い側鎖により電極に対するアセチレン末端の接合角のばらつきが抑えられ、一定の配向を取っていることが示唆された。この結果は単分子電気伝導度計測の結果を支持しており、電極との配向性の向上が安定した分子ジャンクション形成に重要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は関連する研究に関して3報を国際学術誌に報告した。そのため概ね順調に進んでいると判断した。コロナの影響により一部、単分子電気伝導度計測の再現実験が遅れてしまったが、次年度に継続して行うとともに論文投稿準備を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
単分子電気伝導度計測の再現実験ならびに計算化学によるサポートデータを収集し、論文投稿を行う。
|
Causes of Carryover |
コロナの影響により、予定していた実験の一部が遂行困難となったことから、次年度へ繰り越し継続して実験を行うこととした。
|
Research Products
(14 results)