2019 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質結晶への異種金属錯体固定化によるカスケード反応触媒の創製
Project/Area Number |
18K05140
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安部 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40508595)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 多角体 / タンパク質結晶 / カスケード反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、極めて高い安定性をもつタンパク質結晶を複数の金属錯体の反応場として利用し、カスケード反応を触媒する人工金属酵素の創製を目指している。令和元年度は、細胞内で形成される多角体結晶を用いて、2週類の酵素を固定化した固体触媒の構築を行った。加水分解酵素であるリパーゼとアルコールの酸化を触媒するアルコールデヒドロゲナーゼのN末端に結晶への内包を促進させるH1ヘリックスを融合した酵素を昆虫細胞で多角体タンパク質と共発現することにより、2種類の酵素を内包した結晶を作成した。この結晶を用いて、加水分解反応と酸化反応のカスケード反応を行った結果、それぞれの酵素を内包した結晶を混合した場合と比較して、活性が高いことがわかった。限定された結晶空間に2種類の酵素が内包されているためでだと考えられる。 また、多角体結晶のL1H3L2領域の38残基を欠損した変異体を作成した、この変異体を用いても2種類の酵素を固定化することができた。さらに、カスケード反応の活性評価では、野生型と比較して高い反応性をしめした。結晶内部に空間ができ、基質の拡散が野生型と比較して向上しているからだと考えられる。さらに、水溶液中の酵素が失活するような温度でカスケード反応を行うと、結晶に固定化した酵素を活性を維持していた。固体触媒であるため、繰り返し利用しても活性を維持していることがわかった。 以上より、令和元年度は、カスケード反応を触媒する複合結晶の作成に成功し、最終年度は論文投稿を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、タンパク質結晶内でカスケード反応を進めるために、2種類の酵素の固定化を行い、カスケード反応が結晶内で進行することを確認した。多角体の安定性をいかし、通常の酵素では失活するような温度などでも活性を維持することや繰り返し利用できることも示した。したがって、概ね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、リパーゼとアルコールデヒドロゲナーゼを用いたカスケード反応では、作成したハイブリッド結晶を用いたカスケード反応の再現性の確認や反応メカニズムを検討するとともに、論文投稿を進める。
|
Causes of Carryover |
令和元年度は、変異体の合成のため、昨年度と同様にプラスミドやウイルス合成、少量での結晶合成が多く、消耗品にかかる費用が少なかった。最終年度は、より多くの消耗品が必要になるため、最終年度に回すことになった。繰り越した研究費を有効に活用し、多角体変異体の合成と酵素反応の活性評価の消耗品に充てる。
|