2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K05142
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古舘 英樹 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (40332663)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸素分子活性化 / 二核鉄(III)ペルオキソ錯体 / 外部基質の酸化 / C-H結合活性化 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に下記の研究を行った。 1)ピリジルメチル基をサイドアームに有するフェノール骨格の二核化配位子(bpmp)を用いて酸素分子を可逆的に吸脱着する安息香酸架橋の二核コバルト(II)錯体とその酸素錯体の結晶構造解析に成功した。二核コバルト中心周りの構造は,酸素化前,酸素化後でほとんど同じであり,これが可逆的な酸素分子吸脱着と高い酸素親和性に重要であることがわかった。 2) キノリル基をサイドアームに有する二核化配位子 (tqdp) を含むトリフェニル酢酸架橋の二核鉄(III)ペルオキソ錯体の外部基質に対する酸化反応性を検討した。この錯体は,DHAのC-H結合を酸化できることを速度論的研究およびプロダクトアナリシスより明らかとなった。 3)以前報告した二核鉄(III)ペルオキソ錯体の前駆体であるヒドロキソ架橋を有する二核鉄(III)錯体の結晶構造解析に成功した。 4)トルエンモノオキシゲナーゼの機能モデルを目指して,フェニルイミダゾリル基を有する三座配位子を含む二核鉄(III)ペルオキソ錯体を新規に合成し,この錯体の分光学的性質を電子スペクトルや共鳴ラマンスペクトルにより調べた。この錯体は,-80度では安定であるが,-60度では分解する。しかしながら,配位子に組み込んだフェニル基を水酸化しなかった。この結果は,以前報告した類似のフェニルイミダゾリル基を有する二核化配位子を含む二核鉄(III)ペルオキソ錯体の結果とは異なっており,非常に興味深い。今後,この違いを明らかにするためにペルオキソ錯体の結晶化などを進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成したキノリル基をサイドアームに有する二核化配位子 (tqdp) を含むトリフェニル酢酸架橋の二核鉄(III)ペルオキソ錯体は外部基質のDHAのC-H結合を酸化できることを速度論的研究およびプロダクトアナリシスより明らかとした。また,トルエンモノオキシゲナーゼの機能モデルとして合成したフェニルイミダゾリル基を有する二核鉄(III)ペルオキソ錯体では,配位子のフェニル基を水酸化しなかったが,類似の系と比較することで,酸素分子活性化における重要な知見を得ることが期待できる。さらに,二核コバルト(III)ペルオキソ錯体の合成および構造解析にも成功しており,中心金属の変換による酸素分子活性化能(酸化反応性)の違いを明らかにすることも期待できる。以上のように本計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
外部基質に対して酸化反応性を示したペルオキソ錯体の結晶化および構造解析を試み,構造と酸化反応性の相関を明らかにする計画である。また,アレーン類を直接酸化するペルオキソ錯体の例はこれまでに例がないことから,ベンゼンに対する酸化反応性も検討する予定である。また,二核コバルト(III)ペルオキソ錯体の構造解析にも成功したことから,これについても酸素分子活性化を検討し,中心金属の変換による酸素分子活性化能(酸化反応性)の違いを明らかにしていく計画である。
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Research Products
(4 results)