2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K05143
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
植村 一広 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60386638)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一次元鎖 / 多核錯体 / 金属結合 / π結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は溶解性のよい[Mo2(O2CCF3)4]を用いて合成を進めた。[Mo2(O2CCF3)4]と[Pt2(piam)2(NH3)4](CF3SO3)2を各種溶媒中で混合し静置すると、赤色金属光沢をもつ濃青色結晶が析出した。単結晶X線構造解析の結果、モリブデン複核錯体は分解し、ケージ型のKeggin構造をもつMo12核錯体([PMo12O40])が生成していた。さらに、Mo12核錯体は白金四核錯体の[Pt2(piam)2(NH3)4]2で連結され、二次元シートを形成していた。濃青色結晶の組成が[{PMo12O40}{Pt2(piam)2(NH3)4}4]n(CF3SO3)6nであるので、Moは金属酸化数は+6.08で[PMo12O40]4-、白金四核錯体中のPtは+2.25で[Pt2(piam)2(NH3)4]25+と考えられる。すなわち、白金四核錯体は白金ブルーとなり、1つの不対電子が白金四核上に非局在化していることがわかった。また、昨年度合成した紫色粉末と濃青色結晶の拡散反射スペクトルは、ほぼ同じであり、同様の構造体であることもわかった。紫色粉末のXPS測定の結果、モリブデンと白金のいずれも,原料より高酸化状態をとることもわかり、この酸化状態を支持していた。次に、あらかじめMo12核錯体を準備して合成を展開した。H3[Mo12O36(PO4)]と[Pt2(piam)2(NH3)4]X2(X = NO3-、ClO4-、PF6-、CF3CO2-、CF3SO3-)を1:2で、MeOH、EtOH、THF、MeCN、Me2COの各溶媒中で混合したところ、アルコール中では、すぐに青色懸濁液になり、分子間の酸化還元を伴う会合体を生成していると考えられる。THFとMeCN中では、アニオンの種類によって青色懸濁から黄色溶液と異なり、アニオンに依存した会合体であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、構造が未確認だった紫色粉末の分子構造を決定することができたため。目的の化合物ではないものの、それ以上の物性が期待できる集積体であるため、調査を進める予定である。また、反応過程で、モリブデン複核錯体と白金複核錯体との間で酸化還元反応が起きていることもわかり、今後、実験を進めるにあたっての大きな指針をつかめた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標としていた構造体は得られていないものの、その検討過程で、予期しない非整数酸化数をもつ異種金属二次元シートを得た。今後、物性評価を含め合理的な合成法を確立し、類似構造をもつ新たな物質群へ展開していく予定である。また、モリブデン複核錯体が酸化・分解したことを考慮して、不活性雰囲気下での合成を試みる。また、当初の目的である、πバンドを形成させるために、白金複核錯体の[Pt2(piam)2(NH3)4](PF6)2中のtBu基を、Me基に変えた[Pt2(piam)2(NH3)4](PF6)2を用いて合成を進める。さらに、よりHOMOレベルの高い白金-パラジウム三核錯体の[Pt2Pd(piam)4(NH3)4](PF6)2を用いて、新規合成を進める。
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Research Products
(10 results)