2020 Fiscal Year Annual Research Report
Computational modeling of molecular catalysts for direct hydrazene synthesis from dinitrogen
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18K05148
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
田中 宏昌 大同大学, 教養部, 准教授 (20392029)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窒素 / アンモニア / ヒドラジン / 鉄錯体 / 窒素固定 / 理論計算 / 反応機構解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,ピンサー配位子をもつ鉄錯体およびクロム錯体を触媒とした,窒素からアンモニアおよびヒドラジンへの変換反応機構を,量子化学計算を用いて理論解析した.これらの金属錯体は,錯体合成・触媒活性評価を担当する東京大学・西林研究室とともに候補選定し,合成されたものである. ピンサー配位子のベンゼン炭素と鉄が結合した鉄錯体(Fe-PCP錯体)は,最初に報告されたピロール窒素と鉄が結合した錯体(Fe-PNP錯体)と比べて,アンモニアおよびヒドラジンとして固定された窒素原子が18当量から388当量へと飛躍的に増大し,触媒活性が向上した(非触媒反応では最大2当量).ヒドラジンとして固定された窒素原子はそれぞれ3.6当量,136当量であり,ヒドラジンが占める割合は20%から35%と増大している.これは,本研究で掲げていた「より高活性で高選択性の窒素-ヒドラジン変換を可能とする金属錯体触媒の合成」に成功したことを意味する. 現在,実験による反応中間体の単離・同定(西林研)と,理論計算による触媒機構の解析(研究代表者)を同時に進めている.新型コロナウイルス感染症の影響で研究が遅滞したため,反応機構の全貌が明らかにはできていない.しかしながら,鉄に結合する配位子がピロールからベンゼンに変わったことで,Fe-PCP錯体を触媒とした反応経路は,Fe-PNP錯体とは大きく異なる可能性がある.Fe-PCP錯体では,配位窒素分子だけでなくPCP配位子のベンゼン部位へのプロトン付加が起こる経路が見つかった.PCP配位子へのプロトン付加が起こるとFe-炭素結合が切断される.その代わりに電子的に安定なベンゼンが生じるため,系全体としては安定化する.Fe-炭素結合が切断されると,強く還元された低配位Fe中心が発生する.このことがFe-PCP錯体の高い触媒活性につながると推測している.
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