2018 Fiscal Year Research-status Report
σ電子受容性ボラン配位子の多電子移動能を鍵とする二酸化炭素変換
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18K05151
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
亀尾 肇 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50597218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 無機化学 / 錯体化学 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前の研究で σ 電子受容性(Z型)ボラン配位子は、遷移金属との相互作用を柔軟に変化させることで、”電子溜め” の機能を発現することを見出した。そこで、その σ 電子受容性ボラン配位子の特徴が最大限に発現される分子設計を行い、遷移金属-ボラン配位子間の電子移動を鍵とする触媒反応の開発に取り組んできた。本研究では、二酸化炭素の触媒的変換反応を実現するべく、σ 電子受容性ボラン配位子を有する新規錯体触媒を合成および同定して、さらにそれらを用いて二酸化炭素をメタノールへと変換する触媒反応を検討した。 2019年度では、トリホスフィンーボラン TPB 配位子を有するニッケルおよび白金錯体を合成して、それらを分光学的手法により同定し、単結晶 X 線構造解析により分子構造を明らかにした。白金錯体では想定通りの TPB-Pt 錯体が得られたものの、ニッケル錯体では想定に反して、窒素分子がニッケルに末端配位し、TPB-Ni(N2) が生成していることが明らかになった。 得られたニッケルおよび白金錯体をナトリウムテトラヒドロボレート NaBH4 を還元剤して二酸化炭素の還元反応を検討した。触媒反応を実施したのち、水を反応系に添加して二酸化炭素の還元生成物をメタノールに誘導して、メタノールを定量することで各錯体の触媒活性を評価した。その結果、TPB-Pt はほとんど触媒活性を示さなかったものの、TPB-Ni(N2) は二酸化炭素の還元活性を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
σ電子受容性(Z型)ボラン配位子を有する遷移金属錯体を合成し、それらを同定することができた。また、それらの二酸化炭素の還元反応に関する触媒活性を調査し、ニッケル錯体に関しては低いながらも触媒活性を示すことを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
トリホスフィンボラン TPB 配位子を有するニッケル錯体 TPB-Ni(N2) が触媒活性を示したことから、その活性を向上させるため TPB 配位子の誘導体の合成に取り組む。具体的には、ボラン部位の周辺に電子供与性置換基(メチル、t-ブチル、メトキシなど)または電子吸引性置換基(フッ素、トリフルオロメチルなど)を導入することで、ボラン配位子の電子受容能を変化させ、遷移金属-ボラン配位子間の電子移動をより高度に制御する。これにより、高い触媒回転数(TON)を実現する。 また、光を反応系に取り入れるため、可視光を吸収する部位を有する新規ボラン配位子の合成に取り組む。さらに、それらを有するニッケル錯体を合成し、二酸化炭素の還元活性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
残額が少額であり、次年度に合算して有効に使用することにした。
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