2018 Fiscal Year Research-status Report
アニオン性低原子価イリジウムオキソクラスター錯体の創製と機能開拓
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18K05152
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松坂 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50221586)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イリジウム / 三重架橋オキソ配位子 / アニオン性 / 混合金属クラスター / 金 / 銀 / X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
イリジウムオキソ錯体は、水の酸化反応や一酸化炭素の酸化反応の触媒あるいはその前駆体として機能することから、学術的な興味のみならず、資源・エネルギー・環境などの社会問題とも深く関わり得る物質群として注目されている。本研究では、これまでに類例のない きわめて電子豊富なイリジウムオキソ種であるアニオン性Ir(I) オキソクラスター錯体 Na[{(cod)Ir}3(mu3-O)2](1; cod = 1,5-cyclooctadiene ) を創成し、X線解析により構造の詳細を明らかにするとともに、1の特異的な高い求核性に基づく新たな反応化学の開拓にとりくんでいる。[Ir(mu-OH)(cod)]2に対してNaN(SiMe3)2を反応させることにより、2つの3重架橋オキソ配位子を有するアニオン性3核Ir(I)オキソクラスター(1)がほぼ定量的に得られた。(1)はこれまで1例しか報告例のないIr(I)オキソ錯体であり、アニオン性化合物Ir(I)オキソ錯体としては初めての例である。(1)とM(PR3)Cl (M = Au, Ag; R = Me, Ph)とを反応させると、 2の3つのIr中心が形成する三角形の一辺に[M(PR3)]+フラグメントが結合した異種貴金属4核オキソクラスター[{Ir(cod)}3(mu3-O)2}M(PR3)] (2a, M = Au, R = Me; 2b, M = Au, R = Ph; 2c, M = Ag, R = Ph)が80%程度の収率で得られた。一方、(1)とAgClとの反応では、異種貴金属8核オキソクラスター[{Ir(cod)}3 (mu3-O)2}Ag(mu-Cl)]2 (3)がほぼ定量的に生成することも明らかにした。(1)、(2a)~(2c)、(3)はいずれも1HNMRおよびX線解析により構造の詳細を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに類例のない きわめて電子豊富なイリジウムオキソ種であるアニオン性Ir(I) オキソクラスター錯体 Na[{(cod)Ir}3(mu3-O)2](1; cod = 1,5-cyclooctadiene ) を創成し、X線解析により構造の詳細を明らかにすることに成功した。さらに(1)の高い求核性を利用し、4核、5核及び8核骨格を有する異種金属クラスターの構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に得られた成果を基に、当初の計画を軸として一層の進展を図る。特にオキソ架橋アニオン性3核イリジウム(I)クラスターを錯体配位子とする4核以上の異種金属クラスター骨格の構築と、異種金属クラスターを反応場とする新規な分子変換反応の開拓に集中的にとりくむ予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で新たに合成したアニオン性イリジウムオキソクラスターが計画の立案時には想定していなかった無限鎖構造を有することが明らかとなり、固体状態における各種物性の検討に多くの時間を費やす必要が出たことによる。次年度には、前年度計画分と合わせて予算の全額を使用する予定である。
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