2018 Fiscal Year Research-status Report
医工連携による次世代先端光医療用腫瘍選択性生命系色素ハイブリッド貴金属錯体の開発
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18K05161
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
矢野 重信 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (60011186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 洋望 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40381785)
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60405347)
鳴海 敦 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (60443975)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光線力学療法 / 光線力学診断 / 光増感剤 / 糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)光線力学療法 (PDT) とは、光感受性物質に特定の波長の光照射により発生させた活性酸素種によりがん細胞を破壊する治療法であり、低侵襲性治療法として近年注目を集めている。最近当研究室では、極めて高いPDT効果を示すグルコースを連結させたクロリンe6誘導体(Glc-chlorin e6-TME)の開発に成功した。しかしながら薬剤に必要である高い腫瘍選択性、高い酸素発生能、体外排泄性や水溶性については未解決の課題せあった。本年度は水溶性の高いクロリン誘導体の開発を目指して、マルトトリオースを連結させる新規薬剤の合成とPDT評価を行った。 2)Chlorin e6 trimethyl esterをHBr-AcOH溶液に溶解させ2h撹拌した後、K2CO3存在下3-bromo-1-propanolを加え撹拌しアルキルスペーサーを導入した。その後別途合成したThio-Maltotrioseアセチル誘導体を加え塩基存在下で反応させた。生成物にNaOMeを加え撹拌しアセチル基の脱保護を行うことで、目的のMal3-Chlorin e6-TMEを得た。マウス乳がん細胞(EMT-6))に対するin vitro、in vivo PDT試験を実施した。 3)Thio-Maltotrioseアセチル誘導体の導入において、当初目的物がほとんど得られなかった。これは立体障害によるものと考えられたことから、溶媒と塩基について検討を行った。溶媒にDMF、塩基に K2CO3 を用いて室温で24 h 撹拌したときに最も高収率でThio-Maltotrioseアセチル誘導体の導入が可能であることが判明した。Mal3-Chlorin e6-TMEは高い水溶性(約1mM)を有し、EMT-6細胞に対するin vitro試験において高い殺細胞効果が観測され、またin vivo試験においても高い腫瘍抑制効果が実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光線力学治療においては、まず適当量の薬剤(光増感剤)を患者に静脈注射をする。そのためには薬剤の水溶性が極めて重要である。この点から本年度開発のMal3-Chlorin e6-TMEは水に対し1mM程度の良好な溶解性を示したことは評価される。またマウス乳がん細胞(EMT-6))に対するin vitro試験において高い殺細胞効果が観測され、またin vivo試験においても高い腫瘍抑制効果が実証された。なお、金属錯体の合成は今後の課題として残されている。以上から「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
光線力学療法用の各種光感受性色素に様々な糖修飾法を行い腫瘍選択性の高い光増感剤のデザイン合成を行い、それらの機能評価を実施する。さらに貴金属の導入し、重原子効果による高い一重項酸素発生能を発現する高機能性光増感剤の開発を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
分担者との共同研究が順調に実施でき予算(物品費)に余裕が生じたため次年度への繰り越しが可能となった。繰越し分を次年度予算の物品費(合成用試薬代など)および旅費(研究打ち合わせ、資料収集、内外の学会で成果発表・議論など)に繰り入れることにより、光線力学療法・診断用の高性能光増感剤の開発と機能評価を目指す本研究課題の効果的な推進を計画している。
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Research Products
(4 results)