2020 Fiscal Year Annual Research Report
Broadband Fourier-transform CARS as a probe of protein structual dynamics
Project/Area Number |
18K05166
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大間知 潤子 関西学院大学, 理工学部, 講師 (70724053)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非線形ラマン分光 / CARS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は超短パルスチタンサファイアモード同期レーザーが持つ広帯域スペクトルを利用したフーリエ変換型コヒーレント反ストークスラマン散乱(以降FT-CARS)測定により,タンパク質の変性ダイナミクスを捉えることであった。初年度はFT-CARS測定のための光源作製に取り組み,半値全幅130ナノメートル(端から端まで280ナノメートル)の広帯域なチタンサファイアレーザーの作製に成功した。次年度と最終年度を通して,高速FT-CARSシステムを完成させた。FT-CARS光学系内の干渉計において,一方の光路に周波数12 kHzで高速回転するレゾナントスキャナを組み込むことで,ポンプ・ストークス光に対して,プローブ光の相対遅延時間を42マイクロ秒周期で掃引する光学系を作製した。ベンゼンなどラマン信号が既知の物質においてFT-CARS信号を捉え,文献と比較することで,本システムが指紋領域のラマン信号を捉えられることを実証した。このFT-CARSシステムを用いて,時間変化する現象を追跡する研究を進めた。当初はタンパク質を測定対象とする予定であったが,タンパク質の調製までは間に合わなかったため,入手が容易かつ秒の時間スケールで構造が変化するものとして,エポキシ系の接着剤の急速な硬化過程に注目した。接着剤は密着性,接着強度,耐久性等の観点で技術開発が行われているが,分子スケールでの詳細な研究はまだ少ない。自発ラマン測定では分の時間スケールでの変化が報告されているが,本研究でのFT-CARS測定により一スペクトルの取得速度が桁違いに短縮され,また蛍光に埋もれることなくラマン信号を取得することができた。本手法は今後も様々な分野で分子スケールの解析が可能であり,今後は試料対象をタンパク質にも拡げていく。
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