2018 Fiscal Year Research-status Report
生体試料測定のための生体適合性化合物を化学結合したイオンセンサー用感応膜の開発
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18K05172
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
矢嶋 摂子 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80272350)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イオン感応膜 / 生体適合性 / 化学修飾 / スルホベタイン誘導体 / センサー性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオンセンサーは,目的イオンを高選択的に検出可能な分析装置であり,臨床分析に適している。しかし,従来のイオンセンサーの感応部位は生体適合性に乏しい材料で作製されているため,長期間,継続的に生体試料を測定すると,膜表面に生体試料由来のタンパク質などが付着し,センサー性能が低下する。そこで,本研究では,生体試料の測定を長期的に行えるイオンセンサーの開発を目指し,従来のイオン感応膜に生体適合性材料を化学結合することで,高い生体適合性を付与したイオンセンサーの開発を行うことを目的としている。 平成30年度は,末端に炭素-炭素三重結合を導入した生体適合性化合物をアジ化PVCに化学結合させる方法により,生体適合性イオン感応膜の作製を試みた。生体適合性化合物としては,異なるアルキル鎖長を有するスルホベタイン誘導体を設計・合成して,2種類の化合物を得た。これを,支持体としてアジ化PVC,イオノフォアとしてカリウムイオン選択性のバリノマイシンを用いて作製したイオン感応膜表面に,ヒュスゲン環化反応により化学修飾した。化学修飾反応の際に,反応溶媒の組成,スルホベタイン誘導体の仕込み量などの条件を変化させた。反応後の感応膜のIRスペクトルより,スルホベタイン誘導体が修飾されていることが確認できた。一方,膜の接触角を測定したところ,未修飾のものと比較して,接触角がほとんど変化しておらず,スルホベタイン誘導体の修飾量があまり多くないと考えられた。これらのイオン感応膜を用いて,カリウムイオンに対する電位応答を測定したところ,低濃度から感度よく応答した。さらに,ナトリウムイオンに対するカリウムイオンの選択性を調べたところ,高いカリウムイオン選択性を示すことがわかった。これより,感応膜表面に修飾したスルホベタイン誘導体が,イオンセンサー性能にほとんど影響を及ぼしていないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体適合性の化合物(スルホベタイン誘導体)の設計・合成と,得られた化合物のイオン感応膜への化学修飾に関しては,予定よりも順調に進み,2種類の化合物について行うことができた。また,これらのイオン感応膜のセンサー性能の検討も行うことができた。一方,生体適合性の検討についても,条件などを検討することを考えていたが,感応膜作製に時間がかかったため,そこまでは進まなかった。これらを総合的に判断し,おおむね順調に進展している,とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,生体適合性化合物としてスルホベタイン誘導体を化学修飾したイオン感応膜を得ることができ,センサー性能まで調べたが,スルホベタイン誘導体の修飾量とセンサー性能の関係については,検討できていないので,膜表面の修飾量を求めたうえで,センサー性能との関連について検討を進めることにする。膜表面への修飾量があまり多くないと予想されるため,定量するためには工夫が必要と考えている。また,ホスホリルコリン誘導体についても,設計・合成を行い,イオン感応膜への化学修飾と,センサー性能の検討を行う予定である。これについては,化合物の合成が非常に困難であることが予想される。合成に行き詰まった場合には,積極的に専門家の助言を仰ぐことを考えている。 一方,イオン感応膜の生体適合性の評価方法(条件)を検討する予定である。現時点で,適切な評価方法を決定できていないので,まずは,様々な条件で作製したイオン感応膜を用いて評価方法を確立する。その後,可能であれば,生体適合性化合物の修飾量と,センサー性能および生体適合性との関係まで調べることを考えている。
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Causes of Carryover |
まず,平成30年度に参加した学会,2回のうち,1回の開催地が近隣であったため,予定よりも旅費が少なかった。また,実験補助の依頼ができる適切な人物がいなかったため,人件費・謝金の支出がなかった。さらに,生体適合性評価のための試薬として,タンパク質,実験動物の血液を購入し,検討を進める予定であったが,膜作製,センサー性能の検討の実験が予定よりも進んだため,生体適合性評価の実験が予定よりも進行せず,高額な試薬の購入量が少なかった。以上より,当初の予定よりも支出が抑えられた。 次年度は,従来の予定に加えて,少し遅れた生体適合性の検討を進める予定にしている。平成30年度の残額分は,物品費として使用予定で,次年度分と合わせ,物品費は1,080,986円の予定である。これ以外は予定通り,旅費として150,000円,人件費として50,000円とし,直接経費の合計で,1,280,986円を計画している。
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Research Products
(3 results)