2019 Fiscal Year Research-status Report
Rapid and highly sensitive determination of fatty acids in human blood by multistep reactive pyrolysis
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18K05186
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
石田 康行 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70273266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 大介 金城学院大学, 薬学部, 准教授 (70434553)
岩崎 雄吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50273214)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 血清 / 多価不飽和脂肪酸 / 反応熱分解 / EPA / DHA / 高感度分析 / ガスクロマトグラフィー / 有機アルカリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に構築した2段階式の反応熱分解法を、血清中の多価不飽和脂肪酸(PUFA)の分析に適用することを当初の計画としていた。しかし、各種の脂質標準試料を用いて反応熱分解条件の再検討を行った際に、反応性に関わる大きな問題に直面した。その問題とは、初年度に開発した化学反応場は、一部のPUFA成分については加水分解およびメチル化をまったく引き起こせないということであった。具体的には、遊離型、トリグリセリド型およびリン脂質型のPUFA成分については反応熱分解を誘起できるが、コレステリルエステル型については全く反応を引き起こせないことが判明した。この問題を解決できなければ、当該申請課題の目標実現は極めて困難である。 そこで、研究計画を若干変更して、コレステリルエステルについても作用する化学反応場の構築に比較的多くの時間を充てることとなった。具体的には、1) 様々な化学試薬の探求、2)反応温度や試薬の導入量などの反応条件至適化、および3) キャリアーガス流量や注入口条件などのGC関連条件の最適化を行った。その結果、反応試薬として高い誘起効果と共鳴効果を併せ持つアンモニウム塩型の有機アルカリを選択し、温度および導入量をそれぞれ200℃および2400倍(試料成分に対する試薬の物質量比)に設定したところ、コレステリルエステル中の脂肪酸成分を50%以上の回収率でもって分析できることを見出した。 こうして新たに構築した化学反応場とGCを連結した結果、わずか1マイクロリットルの血清に含まれるEPAやDHAをはっきりと検出することに成功した。さらに、それらのピーク面積を基にして、含有量の定量も高感度に行うことができた。以上の経緯から、当初の研究計画から若干遅れることにはなったものの、血清中のPUFAを高感度に定量する化学反応場を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、実際の血清に含まれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)の高感度検出を試みたところ、反応性に関する大きな問題に直面した。各種のPUFA標準試料を用いて、反応効率を確認した結果、遊離やトリグリセリド型のPUFAは高効率に加水分解とメチル化を誘起できたが、コレステロールに結合した当該成分についてはほとんど反応を引き起こせないことが判明した。予想外の問題であるとともに、本研究の目標達成のためには解決が欠かせない課題である。そこで実験計画を若干変更し、コレステリルエステルについても高い反応性を示す反応場の構築を行った。その結果、50%以上の反応性を実現することができ、これにより当初の実験目標を達成できる可能性が十分高まった。上記の追加実験により、進捗状況はやや遅れることとなったが、反応性の問題は解決することができた。次年度には計画通りに実験を行える見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本手法により得られた測定値の信頼性評価が必要である。測定値の再現性を検証し、精度の観点からの評価を行う。さらに、溶媒抽出やオフラインでの化学反応を利用した、従来法によるクロスチェックも行う。両手法による結果を各種統計的手法を活用してデータ解析することにより、本手法の確度についても評価を試みる。 さらに、本研究の特徴でもある、PUFA成分の存在状態ごとの分析にも着手する。すでに初年度に構築した2段階反応熱分解法(2種類の異なる化学試薬を血清試料に対して連続的に作用させる方法)を発展的に応用して、遊離型およびエステル型のPUFA成分を個別に定量することを目指す。さらに、酵素反応を化学反応場の前段階に活用することにより、脂質種ごとにPUFA成分を分析することも試みる。
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Causes of Carryover |
研究実施状況にて述べたように、今年度は予想外の実験内容(反応性向上のための条件検討)に多くの時間を費やした。本来実施予定であった、2段階式反応熱分解を利用した実験は次年度に繰り越して行うことになった。その実験では試薬や分離カラム等の消耗品購入に多額の出費が予想されるため、研究費の一部を次年度に繰り越して活用することにした。
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Research Products
(9 results)