2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of DNA sequencing method targeting on guanine and abasic site
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18K05195
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
呉 純 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90415646)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 5-ヒドロキシメチルシトシン / メチルシトシン / グアニン塩基 / ビオチン / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はゲノムDNAの脱メチル化の中間体である脱塩基・グアニンを標的とし、それを含むDNA断片を回収し、次世代シークエンサーによる分析法の確立を目指している。前年度において、オリゴDNAサンプル中のグアニン塩基を4-アジドフェニルグリオキサールで修飾したのちに、アジド・シュタウディンガーライゲーションを介してDNA中のグアニン基の特異的なビオチン化に成功したので、本年度は、哺乳動物細胞由来のゲノムDNAからグアニンと脱塩基サイトを含む断片のビオチン化、ストレプトアビジンビーズによる分離と次世代シークエンサーによる解析を試みた。使用したゲノムDNAはRajiというヒトバーキットリンパ腫瘍細胞株から抽出したものであった。実験は、まず市販のゲノムDNA抽出キットを用いて調製し、ゲノムDNAの断片化と平滑末端の修復を行ったのちに、4-アジドフェニルグリオキサールと反応させ、アジド ・シュタウディンガーライゲーションを介してDNA中のグアニン基のビオチン化を行った。次に、ゲノムDNA断片の末端にアデニンの付加やY字型アダプターとのライゲーションを行った。さらに、ストレプトアビジンビーズを用いてビオチン断片を回収した。脱塩基を有するDNA断片を鋳型とするPCR反応ではアデニンが挿入される、いわゆる“A-ルール”が知られるので、Taqポリメラーゼによる回収したDNA断片の増幅を行った。増幅したDNAを精製した後に、次世代シークエンサーによる測定を外部機関に依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドにおけるメチルシトシンの除去は遺伝子転写の再活性化において重要な役割を果たす。現在、DNAのシトシンの脱メチル化の解析においてバイサルファイトシーケンス法が広く用いられている。この方法ではゲノムDNA中のシトシンがバイサルファイトによってウラシルに変換されるが、メチルシトシンがそのまま残る。しかし、ゲノムDNAはこの過程においてかなりダメージを受けることが知られている。よって大量なサンプルの調製が必要である。一方、本研究は、メチルシトシンの除去反応において、脱塩基サイトが生成され、その塩基対であるグアニンがフリーな状態に着目し、グアニンと脱塩基サイトを含む断片のビオチン化による単離と次世代シークエンサーによる解析という変化したゲノムDNAを対象とした分析法の確立を目指している。昨年は、オリゴDNAのグアニンのビオチン化法の確立に成功した。本年度は、哺乳細胞由来のゲノムDNAを用いた実験を行った。特に、ゲノムDNAの断片化の条件、ストレプトアビジンビーズからビオチン化断片の溶出ならびにPCR反応の条件について検討した。本年度はそれらの条件を最適化することに成功した。最終的にマイクロチップ電気泳動装置にて平均サイズの確認し、次世代シークエンサーによる解析まで進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、読まれたリード配列のマッピングやPCR反応によるグアニンからアデニンへの変異の探索を進めていく予定である。また、メチルシトシンの脱離機構はメチル化シトシンヒドロキシラーゼTET1によって5-メチルシトシンから5-ヒドロキシメチルシトシンに変換されるか、あるいは活性化誘導シチジンデアミナーゼAIDによって脱アミノ化されてチミンに変換された後、チミンDNAグリコシラーゼTDGによって塩基が除かれて脱塩基・グアニンサイトという中間体を経て、最終的に脱塩基サイトに修飾されていないシトシンに変わることが報告されている。細胞内のTDGによる5-ヒドロキシメチルシトシンやチミンの除去は脱メチルシトシンの多段階反応の律速段階であると考えられている。微生物由来のTDGはチミンだけ除くことができるが、哺乳動物由来のTDGは5-ヒドロキシメチルシトシンを除去することも可能である。現在、哺乳動物由来のTDG組み換えタンパク質が販売されていない。そこで、市販の無細胞タンパク質合成キットを用いてDNAチミングリコシラーゼの発現と活性評価を進める。また、ゲノムDNA中に残存している5-ヒドロキシメチルシトシンの除去反応ステップを追加し、in vitroでゲノムDNA中にグアニンと脱塩基サイトを作製し、次世代シーケンサーによる解析を予定している。未処理サンプルの結果との比較ついても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
計画よりも安く試薬を購入できたため、残額2901円が生じた。次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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