2018 Fiscal Year Research-status Report
表面プラズモン共鳴を利用した光熱触媒による二酸化炭素のメタン化
Project/Area Number |
18K05207
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
加古 哲也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (00399411)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 光 / 還元 / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化炭素から水素および模擬太陽光あるいは光の熱および光子を利用することによって、二酸化炭素から有用な化学エネルギー源物質(メタンやメタノール、一酸化炭素など)を合成することを試みた。特に当該年度は光子による反応活性の増大に注力した反応システムを利用し、実験を行った。つまり、暗所下で触媒を外部電源由来のヒーターで加熱することで光熱照射時と同じ温度になるようにコントロールした比較実験も併せて行っている。 当該年度は触媒として、ルテニウム・酸化チタンを利用した。模擬太陽光の光源として、キセノンランプを利用し、紫外光および可視光を照射した。その結果、光を照射することで、暗所下のみよりも約30%メタンの生成効率が上昇した。表面の温度が同じであるため、その活性の差は光子に由来するものであると考えられ、酸化チタンの光触媒反応、すなわち、伝導帯で生成した電子による還元反応の促進の寄与も考えられうるし、還元された酸化チタンの効果も考えられうるが、詳細な理由については未だ検討中である。また、副生成物である一酸化炭素の量も1%未満に抑えられており、高い選択率を示した。 更には、異なる触媒として銅担持酸化亜鉛を利用し、同様に水素を利用した二酸化炭素の還元実験を行った。その結果、一酸化炭素とメタノールの生成が確認され、光照射により、これらの有用な化学エネルギー源物質の生成活性が増大した。この増大は光子による反応の寄与が示唆された。特に、触媒中のCuは波長約600nm付近を中心としてブロードに表面プラズモン共鳴による吸収を示しているので、追加実験として600nm付近の光を選択的に照射したところ、活性の増大が顕著にみられた。これらのことから、Cu金属の表面プラズモン共鳴により、生成した電子が酸化亜鉛表面に移動し、二酸化炭素の還元反応を促進したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は暗所下で触媒を外部電源由来のヒーターで加熱することで光熱照射時と同じ温度になるようにコントロールした比較実験も併せて行うことで、光子のみの活性への影響を調べることができるようになった。実際、二酸化炭素還元活性を測定したところ、活性は光照射により顕著に増大しており、光子による光反応が活性の増大に寄与していることが示唆された。また、反応段階において、担体である酸化チタンが一部還元されたり、金属触媒銅の表面プラズモン共鳴による活性の増大も観測されたりしており、当初提案した活性向上の手法が首尾よく利用でき、それらがうまく機能しているといえる。それゆえ、概ね順調に進んでいると言えると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、可視光照射下での表面プラズモン共鳴による電子の励起そして、半導体担体表面への遷移、そこでの還元反応により二酸化炭素還元反応が促進されることが確認できた。しかし、より多くの太陽光、より多くの照射光を吸収するためには、可視光領域のみならず、紫外光領域、赤外光領域にも表面プラズモン共鳴などにより吸収を持つことができるほうがより望ましく、活性の向上が期待できる。それゆえ、担体の還元や紫外光域に表面プラズモン共鳴吸収を示す金属を利用し、光子による電子の遷移による効果のみならず、熱の伝播による効果をも利用するために、触媒との距離を近接させるように検討する。また、その熱をさらに有効利用できるように、かつ触媒活性を維持できるように粒径についても、適切になるように検討する。触媒金属の合金化により、触媒活性そのものの改善も期待できるし、この近接効果も期待できる可能性もあるため、それらの検討を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)