2018 Fiscal Year Research-status Report
新規なベンゾオキサザボリン骨格を有する有機構造体の構築と結合組み換えによる機能化
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18K05221
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
大石 智之 成蹊大学, 理工学部, 助教 (80582973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 明弘 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50343637)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベンゾオキサザボリン / 重縮合 / 有機構造体 / 含ホウ素ヘテロ環化合物 / 動的共有結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年盛んに研究されている含ホウ素ヘテロ環からなる有機構造体 (大環状化合物やカゴ型分子、多孔質構造体)は、ボロン酸化合物の脱水縮合反応により合成されているが、反応溶媒中の水の除去や、目的物を析出させる手法が用いられてきた。一方で申請者は有機溶媒に対する溶解性の高い共役系含ホウ素ヘテロ環化合物であるベンゾオキサザボリン誘導体の合成を見出した。本研究ではベンゾオキサザボリンを基本骨格とする有機構造体の構築を目指している。本年度は(1)ベンゾオキサザボリン化合物の熱力学的安定性および加水分解耐性の調査、(2)ベンゾオキサザボリン化合物のカップリング反応、(3)ベンゾオキサザボリンの結合組み換えを利用した有機構造体の合成について検討した。 (1)においてベンゾオキサザボリン化合物の熱力学的安定性では、例えば他の含ホウ素ヘテロ環化合物のベンゾオキサザボロールに 2-アミノベンジルアルコール誘導体を有機溶媒中で混合させるとベンゾオキサザボリンに速やかに交換されたことから熱力学的安定性の高い含ホウ素ヘテロ環化合物であることが明らかになった。また、加水分解耐性ではホウ素近傍に導入するアルキル鎖をかさ高くすると加水分解されにくいことが明らかになった。これらの結果に基づき、(2) ではベンゾオキサザボリン化合物を用いて鈴木宮浦カップリングを行うと、加水分解されずにカップリング反応が進行することが明らかになった。さらにアミノベンジルアルコールユニットを2つ有する種々のモノマーと芳香族ジボロン酸モノマーの重合検討では、モノマーのデザインや重合条件によって直鎖状のポリマーや環状物などを作り分けることができた。以上の結果から、既存の含ホウ素ヘテロ環化合物と比較してベンゾオキサザボリン化合物の構造安定性における知見に加え、含ホウ素ヘテロ環を形成する際の官能基許容性やモノマーの適用範囲などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の根幹となるベンゾオキサザボリンのモデル化合物の合成と構造解析、熱力学的安定性に関する論文が学術誌に掲載された。また、本研究で必要な 2-アミノベンジルアルコールモノマーやジボロン酸モノマーの合成手法も確立でき、詳細な検討が十分に行える環境を整えることができた。実際に様々なポリマーや環状物の合成における最適条件も確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの知見を基に、ベンゾオキサザボリン化合物どうしの結合組み換え、ベンゾオキサザボリン環を有する環状物やカゴ型分子の合成検討を行う。これらの結果からベンゾオキサザボリンを有する多元構造体を合成した際の構造安定性について調べる。
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Causes of Carryover |
初年度に計画しているモノマー合成および重合検討において、予想しているよりも短期間で合成手法を確立することができ、その後の精製操作でも比較的容易に目的物を単離することができたため、当該助成金が生じた。 今後は、合成した高分子の特性を評価するために大きいスケールでのモノマー合成や重合検討を行うことを計画しており、反応に用いる試薬や、精製操作などで使う溶媒などに使用する予定である。
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