2020 Fiscal Year Research-status Report
有機薄膜トランジスタ作製のための感光性ホスホン酸誘導体の開発
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18K05222
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山口 和夫 神奈川大学, 理学部, 教授 (20114902)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 感光性ホスホン酸 / 自己組織化単分子膜 / 有機薄膜トランジスタ / 2-ニトロベンジル誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年度、ペルフルオロアルキル鎖を芳香環に導入した2-ニトロベンジルカルバマートとしてアミノ基を保護した感光性ホスホン酸誘導体2の合成に成功し、2から得られるSAMが、感光性シランカップリング剤と同等の性能を示すことを明らかにしたのに続いて、昨年度はペルフルオロアルキル鎖の代わりに、かご型ポリシロキサンであるPOSS(Polyhedral Silsesquioxane)を導入したホスホン酸4を合成し、得られるSAM 4もSAM 2と同程度の性能を示すことを見出した。これらの結果を受けて、本年度は2-ニトロベンジル基のベンジル位の置換基を変化させ、POSSを2つ導入させた感光性ホスホン酸誘導体の合成を検討した。比較のために昨年度からホスホン酸の代わりにPOSSを含む感光性シランカップリング剤5を用いたSAM 5の評価も行っていたが、今年度も引き続き感光性ホスホン酸とシランカップリング剤の比較検討を行った。 さらに、昨年度2-ニトロベンジルカルバマートの芳香環にカルボキシ基を導入した6の合成に成功し、それから得られるSAM 6を用いて、フォトマスクを介した一度の光照射により、アミノ基とカルボキシ基の2種類の官能基をパターン形成することができた。この成果をもとに特許を出願した。本年度は、この特許の実施データを補充するために、アミノ基とカルボキシ基のパターン形成可能な異なる構造を持つ化合物と、ヒドロキシ基とカルボキシ基のパターン形成できる新規化合物の合成を行った。さらにその感光性SAMの評価も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染防止対策として、神奈川大学では講義はすべて遠隔授業で行った。研究代表者は遠隔授業の準備等に、多くの時間を割かれることになった。また、共同研究者である大学院生、卒研生も実質的に本研究に関する実験を行えたのは後学期のみであり、また、その時間も不十分であった。 そのため、本研究の遂行が大幅に遅れており、最終年度でありながら計画していた研究をまとめ上げることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、2-ニトロベンジル誘導体を含むホスホン酸による感光性SAMを用いて、有機薄膜トランジスタ作製のための新しい方法を開発するものである。新型コロナウイルスの影響もあって、特に予定していた最終年度である3年目の研究が進んでいないのが現状である。そこで研究期間を1年延長させてもらい、トランジスタ作製法の可能性を探る予定である。 2020年度計画していた有機薄膜半導体の[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)の末端にアミノ基と反応する活性カーボナートを持つ誘導体3の合成、あるいはその類似体の合成を成功させる。 さらに、過去3年間行ってきた研究成果をもとに、2-ニトロベンジルエステル構造を含むホスホン酸を基板上に塗布し、得られる感光性SAMのパターン照射により生成するアミノ基上にソース電極、ドレイン電極を作製する。電極間の未露光部分に残っている2-ニトロベンジルカルバマートを光照射により除去し、生成したアミンに対し3を反応させBTBT構造を固定する。その上にBTBTを塗布して有機薄膜トランジスタを作製し、その移動度を測定し、デバイスとしての評価を行う。 電極作製後、光照射により露出したアミノ基と活性エステルとの反応により、有機半導体と類似の構造を有するSAMを二段階で作製することができ、その上に塗布する有機半導体BTBTの配向性を制御し、より優れたデバイスの作製法として期待できる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、予定した研究計画をほとんど遂行することができなかったため、次年度にこれを使用することになった。
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