2019 Fiscal Year Research-status Report
両親媒性交互マルチブロックコポリマーミセルの速度論的安定性評価
Project/Area Number |
18K05224
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
勝本 之晶 福岡大学, 理学部, 教授 (90351741)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真田 雄介 福岡大学, 理学部, 助教 (80585620)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 両親媒性交互マルチブロック共重合体 / ミセル化 / 蛍光相関分光法 / 溶液物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,(1)立体制御されたPoly(N-isopropylacrylamide) (PNiPAm)をブロックと する交互マルチブロック(AMB)型ブロックコポリマーの溶液物性の解明,(2)蛍光相関分光法による立体制御PNiPAmの凝集挙動解析,(3) 両親媒性poly(ethylene oxide) (PEO)- poly(propyreneoxide) (PPO) AMB共重合体の溶液物性に対する分子量の影響の解明,を行った.(1)では,前年度に合成されたPEO-PNiPAm AMB 共重合体の溶液物性を,静的・動的散乱法,小角X線散乱(SAXS)法,蛍光プローブ法などを用いて調べた.この結果,PNiPAmホモポリマーの曇点より低い温度では,PEO-PNiPAm AMB 共重合体ユニマーがランダムコイル状になっていること,またその広がりがPNiPAmの立体規則性に依存することがわかった.また,温度を上げると,PNiPAmが脱水和して直径40 nm程度の会合ミセルを形成することが明らかとなった.PEO-PNiPAm AMB共重合体は,また,PNiPAmブロックの立体規則性に依存して,ミセルの形成・解離におけるヒステリシスが強くなった.これらのことから,PEO-PNiPAm AMB共重合体の溶液物性は,AMB構造に取り込まれたPNiPAmブロックの性質に大きく影響されることが明らかとなった.この結果は,論文として発表した(K. Rikiyama, et al. Macromolecles 2019).(2)では,立体制御されたPNiPAmに蛍光色素を導入し,単一分子の拡散および凝集挙動を追った.蛍光相関分光法の特性を活かし,高分子濃度2.0 × 10^-5 wt%の極希薄容積の測定が可能になった.(3)では,沈殿分別法によるPEO-PPO AMB共重合体の分子量分画の条件を最適化した.この結果も,論文として発表した(T. Horiuchi, et al. J. Oreo Sci. 2020).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった、PEO-PNiPAm AMB共重合体の溶液物性の解明については完了し,論文を執筆した.PNiPAmの蛍光標識も行い,極希薄溶液における蛍光相関分光(FCS)測定が可能であることもわかったが,蛍光標識されたPNiPAmをAMB共重合体へ組み込むことはできていない.これは,蛍光標識されたPNiPAmのFCS測定の際に,いくつか測定装置系で改良すべき点が見つかったためであり,その調整に時間が取られたためである.具体的には,温度を室温以上に上げて測定する際に,対物レンズとサンプルセルの間の水が蒸発し,長時間の測定ができないことなどが問題になった.現在装置の改良と測定方法の見直しによりこの問題はほぼ解消された.また,PEO-PNiPAm AMB共重合体では準安定ミセルが非常に安定しており,解離挙動の観測が難航している.この点は,現在疎水ブロックの化学構造を変えたもので研究をすすめている.
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,(1) FCS法によるAMB共重合体のミセル崩壊・凝集体解離過程の計測および,(2)AMB共重合体ユニマーの溶液中形態の化学構造・分子量依存性の解明,(3)蛍光標識AMB共重合体の合成,キャラクタリゼーション,溶液物性測定を行う.2020年度に,FCS法を高分子溶液に応用するための調整はほぼ完了し,現在は得られたFCSシグナルの数値解析法の最適化に移っている.また,これまでの検討で,様々なモノマー構造を有するAMB共重合体を得ることが可能になった.このような状況から,蛍光標識されたAMB共重合体の合成が可能な状況になっていると判断される.
|
Causes of Carryover |
新型コロナにより,予定していた共同研究者との研究打ち合わせができなくなったため,次年度使用額が生じた.この額は,現在若干不足している合成試薬の購入に使用する予定である.
|
Research Products
(18 results)