2021 Fiscal Year Research-status Report
高次構造制御された多糖への位置特異的側鎖導入による高機能化
Project/Area Number |
18K05225
|
Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
山本 智代 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80314045)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 多糖誘導体 / 光学分割 / HPLC / キラル固定相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は天然に存在し入手容易な光学活性高分子である多糖を出発原料とし、『水酸基を位置特異的に誘導体化した多糖誘導体の合成』と、『導入する置換基の精査による機能発現』に関する研究を目的とするものである。これまでの研究より、多糖の中でもセルロースやアミロースを構成するグルコース環の3つの水酸基に同じ置換基を導入したフェニルカルバメート誘導体は、HPLC用キラル固定相として極めて高い能力を有することが分かっているが、3つの水酸基に位置特異的に置換基を導入した誘導体の能力についてはまだ不明な点が多い。 令和3年度は、前年度に「今後の研究の推進方策」として計画した、アミロースのグルコース環の2位に導入するエステル部位に塩素および二重結合を入れた誘導体を合成し、その光学分割能を調べた。その結果、2位をクロロアセテート、3,6位をこれまでで高い能力を示した4-クロロフェニルカルバメートへと変換した誘導体はキラルなコバルト錯体に対して高い分離係数α値を示した。また、これまでに合成した3,6位が同じで2位のみが異なる構造を有する誘導体と比較すると、2位のエステル部位がかさ高くなると鏡像異性体の溶出順序が逆転する傾向を見出すことができた。一方、二重結合を導入した誘導体については、エステル部分の炭素数が同じ誘導体と比較して二重結合の有無の効果を調べたところ光学分割能は全体的に低下しており、二重結合を導入し側鎖を剛直にしたこと、またそれによって不斉空間を制限することは有効ではないと推測された。 また、アミロース、セルロース以外の多糖として、フルクトフラノース残基が直鎖状にβ-(2→1)結合したイヌリンを用い、新規フェニルカルバメート誘導体の合成と光学分割能評価を行った。その結果、p-メチル、およびp-クロロフェニルカルバメート誘導体が、高くはないものの光学分割能を有することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の報告書で「今後の推進方策」に挙げた「アミロース2位のエステル部位のプロピル基に二重結合や塩素を導入した誘導体を合成しその光学分割能を調べる」、「アミロース、セルロース以外の多糖についても誘導体を合成し、光学分割能評価を行う」の2点について、合成できた誘導体は多くはないものの、予定通り遂行することができた。よって、進捗状況としては「おおむね順調に」を選択した
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は最終年度にあたるため、これまで行ってきた、アミロースの位置特異的誘導体に関する研究のまとめを行う。2位のエステルはベンゾエート基を導入し、3,6位のフェニルカルバメートの構造の違いによる光学分割能評価を行う。また、アミロース、セルロース以外の多糖についても令和3年度に引き続きイヌリンを用い、新規フェニルカルバメート誘導体の合成と評価を行うとともに、キトサンについても新たな誘導体の合成を行いたい。キトサンは2位にアミノ基を有していることから、アミノ基に特異的な反応を用いることで、2位に3,6位とは異なる側鎖を導入することができる。過去の研究より、得られるキトサン誘導体は溶解性が低くキラル固定相の調製が困難な場合があることが分かっている。よって、ハロゲン基を有する誘導体を合成することで実用的なHPLC用キラル固定相を作製することを目指す。また引き続き、コロナ禍による研究時間の短縮を考慮し、NMRを用いた不斉識別機構に関する研究も行い、研究全体の総括を行いたい。
|
Causes of Carryover |
令和3年度に予定していた物品費については、ほぼ当初の予定通りの額を使用したが、コロナ禍にあって「旅費」を使用せず、また、「その他」の経費も使用予定がなかったため次年度に繰り越すこととなった。繰越金の令和4年度での使用については、主に物品費として研究の試薬・器具等の購入を予定している。
|