2019 Fiscal Year Research-status Report
Surface fluctuation before dewetting of thin films studied by X-ray photon correlation spectroscopy
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18K05226
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
星野 大樹 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (20569173)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | X線光子相関分光法 / コヒーレントX線 / ガラス転移 / 動的不均一性 / 剪断 |
Outline of Annual Research Achievements |
コヒーレントX線によるダイナミクス測定手法であるX線光子相関分光法(XPCS)により、ガラス転移点に近い温度でのポリ酢酸ビニルにプローブとして分散させた微粒子の運動を、ナノメートルスケールで測定した。様々な速さの剪断を試料に加えることで、微粒子の動きがどのように変化するかを詳細に調べた。 まず、X線照射領域における剪断速度は、散乱スペックルの時間的な揺らぎの異方性から見積もった。散乱スペックルの時間的な揺らぎは、剪断により生じる速度勾配の影響により剪断方向の方が直交方向よりも速くなる。これを利用することで、剪断平行方向および剪断直交方向の時間自己相関関数に対して、速度勾配の影響を考慮した式でフィッティングを行い、観察領域の剪断速度を正確に見積もった。 次に、それぞれの剪断速度での4次の相関関数を計算し、剪断速度との依存性を調べた。この4次相関関数は、ピーク位置が特徴的な時間スケールを表し、ピーク高さがダイナミクスの不均一性を表し、分子動力学計算などでガラス状態の研究で議論される動的不均一性に対応する。これらの実験的に得られた、ピーク位置、ピーク高さを剪断速度に対してプロットすることで、剪断速度が遅い場合には、比較的大きな動的不均一性観測されていたが、剪断速度を上げていくと動的不均一性が低下しており、ダイナミクスの時間スケールが速くなっていることが示された。これらの結果について、過去に分子動力学計算で報告されているものとの比較も行い、近い傾向にあることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、剪断速度と動的不均一性の議論を定量的に行い、論文としてまとめた。これらの議論は、ガラス転移点近傍での揺らぎにとどまらず、界面に生じる様々な揺らぎを議論する上でも重要な基盤となる。以上の理由から、本研究が順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究は、比較的分子量の低い材料を用いてきたため、高分子の特性については議論していない。これまでよりも分子量の高い試料について、これまでの実験・解析を展開する。高分子の特徴が現れる複雑な系については、計算科学でもほとんど議論されておらず、新たな学術的な発見が期待される。定量的に深い議論を可能にするために、これまで1桁程度であった剪断速度の範囲をより拡張する。
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Causes of Carryover |
薄膜表面の揺らぎ評価のための薄膜観察用の真空セル、観察用顕微鏡等への出費を予定していたが、ガラス転移点近傍の動的不均一性の議論を中心に行ったことで、既存の装置で対応可能となり、当初予算よりも少ない支出で研究が進み、差額が発生した。
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Research Products
(7 results)