2018 Fiscal Year Research-status Report
π共役系高分子ナノ結晶の構造制御と可視光応答型有機光触媒の創出
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18K05227
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野寺 恒信 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10533466)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機光触媒 / π共役系高分子 / 固相重合 / 有機ナノ結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
π共役系高分子は可視域に鮮やかな吸収を示すとともに、無機材料に比べて光吸収係数が大きいという長所を持つ。結晶として用いることが出来れば、対応するアモルファス材料と比較して、荷電キャリアの失活を抑制した可視光エネルギー変換が期待される。しかし、π共役系高分子材料はアモルファスか低結晶状態で用いられることが多く、これは高分子の結晶化にエントロピー的不利を伴うことが原因である。一方、我々はπ共役系高分子であるポリジアセチレン(PDA)をナノ結晶化する技術(再沈法)を独自に開発し、PDAナノ結晶が光触媒活性を示す知見を得てきた。そこで本申請研究では、ジアセチレン(DA)ナノ結晶における構造相転移型固相重合反応を対象に、相転移ダイナミクスのサイズ効果を解明することでナノ結晶の内部構造を最適化するとともに、ポリジアセチレンナノ結晶の可視光応答型光触媒能(色素退色能と水素発生能)との構造相関を明らかにして、有機ナノ結晶の内部構造と機能との相関の解明とバルク結晶を凌駕する有機光触媒の創出を目指した。 初年度は、DAナノキューブ(NC)とナノファイバー(NF)について、固相重合によって伸長する励起子吸収の時間変化を追跡することで、構造相転移型固相重合挙動のサイズ効果を検討した。その結果、両者の重合挙動には明確な相違が観測された。そこで、助触媒として銀ナノ結晶を担持したAg-PDA NCの水分散液にローダミンB(RhB)を加え、カラーフィルターを装着したキセノンランプによる光照射下でRhBの退色実験を行った。可視光照射下におけるRhBの吸光度の減少速度は、PDA < Ag-PDAの順に大きくなった。さらに光触媒活性の波長依存性は、PDA結晶の光伝導特性だけでなく銀ナノ粒子の局在型表面プラズモン共鳴とも一致していることから、銀ナノ粒子が増感剤としての役割を担っていることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、サイズ・形状制御されたナノキューブ(NC)とナノファイバー(NF)を作製し、紫外線照射によって誘起される構造相転移型固相重合ダイナミクスのサイズ効果を調査するとともに、助触媒として銀ナノ結晶を担持したAg-PDA NCを用いてローダミンB(RhB)の光退色実験を行った。具体的には、 (1)構造相転移型固相重合ダイナミクスのサイズ効果 固相重合によって伸長する励起子吸収の時間変化を追跡することで、構造相転移型固相重合ダイナミクスのサイズ効果を検討した。その結果、NCでは少しずつ重合が進行するのに対し、NFでは相転移的に重合が進行することが分かるとともに、PDA NFの励起子吸収ピークは対応するバルク結晶より先鋭化し、長波長側に観測された。PDAバルク結晶では側鎖間の相互作用が強すぎることで主鎖が歪んでいるものの、ナノファイバーでは結晶格子が相対的に柔らかくなったことで(比表面積の増大や側鎖間の相互作用が弱まったことで)、固相重合に伴う歪みの蓄積/解放挙動が変化するとともに、主鎖のπ共役系が安定化されたと考えられる。 (2)光退色実験 はじめに、助触媒として銀ナノ結晶を担持したAg-PDA NCを作製した。再沈法で作製したPDAナノ結晶水分散液に硝酸銀水溶液とアンモニア水を添加したところ、可視光照射下でのみ分散液は緑色に変色し、銀ナノ粒子がPDAナノ結晶表面に還元・析出したことを電子顕微鏡観察で確認した。この反応は固相重合していないDAナノ結晶(無色)では全く進行せず、PDAのエネルギー準位や銀錯イオンの酸化還元準位などを比較することで、反応メカニズムを可視光応答型光触媒還元と結論づけた。さらに、水分散液にRhBを添加し、光退色実験を行った結果、可視光照射下におけるRhBの吸光度の減少速度は、TiO2 (P25) < PDA < Ag-PDAの順に大きくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は初年度に引き続き、PDAナノ結晶を用いたローダミンB(RhB)の光退色実験に注力する。初年度にDAナノ結晶の構造相転移型固相重合ダイナミクスおよびPDAナノ結晶の光消失スペクトルに結晶サイズ・形状依存性が認められたことから、特に光触媒能のサイズ・形状依存性を明らかにするとともに、助触媒の担持量の最適化を行う。 また、PDAナノ結晶水分散液に白金塩および犠牲剤を添加して、カラーフィルターを装着したキセノンランプを用いて所定の波長の光を照射し、水素発生実験を行う予定である。 以上により、PDAナノ結晶の可視光応答型光触媒能(色素退色能と水素発生能)との構造相関を明らかにすることで、有機ナノ結晶の内部構造と機能との相関の解明とバルク結晶を凌駕する有機光触媒の創出を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 (使用計画) 次年度請求額と合わせて、計画している研究の推進に使用する予定である。特に、次年度には水素発生実験を予定していることから、追加配分することで円滑に研究を進める予定である。
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Research Products
(9 results)