2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05229
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
谷口 竜王 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30292444)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノカプセル / 可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合 / 両親媒性ブロックコポリマー / 転相温度(PIT)乳化 / エマルション / コアセルベーション / 液晶化合物 / ネマチック相-等方相転移温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目の取り組みとして,フレキシブル液晶ディスプレイに応用可能な液晶化合物を内包する100 nm程度の液晶ナノカプセル(LC-NCs)の調製について検討した。初めに,転相温度(phase inversion temperature: PIT)乳化において界面活性剤として用いる両親媒性ブロックコポリマーを合成した。まず,親水性モノマーであるoligo(ethylene glycol) methyl ether methacrylate (OEGMA)と疎水性モノマーであるmethyl methacrylate (MMA)との逐次的な可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を行い,PMMA20-b-POEGMA36を合成した。PMMA20-b-POEGMA36の界面化学的特性の評価を行い,PITを87 °Cと決定した。次に,PMMA20-b-POEGMA36を用いたPIT乳化法により,フッ素系液晶化合物(JD-5037XX,JNC石油化学製)が溶解したMMAを油相とするoil-in-water(O/W)型エマルションを調製した。架橋剤(ethylene glycol dimethacrylate (EGDMA))が溶解したO/WエマルションMMA油滴を重合すると,約90 nmのLC-NCsを作製することができた。熱重量分析により液晶含有率を約62 wt%と算出するとともに,示差走査熱量測定によりLC-NCsがJD-5037XXと同じネマチック相-等方相転移温度(TNI)を有していたことから,MMA油滴内でのコアセルベーションにより相分離が理想的に進行し,カプセル構造が形成されていることが示された。また,LC-NCsを偏光顕微鏡により観察したところ,TNI以下で青色の光学組織が発現し,TNI以上で暗視野に変化したことから,LC-NCsが液晶性を発現することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,PIT乳化により得られるO/W型エマルションのモノマー油滴を重合し,油滴内でのコアセルベーションを誘起し,「光学材料を内包する透明なナノカプセルの調製」に必要な材料設計を確立することを目的としている。1年目に成功したフォトクロミック色素を内包するリキッドコアナノカプセルの作製から得た知見をもとに,2年目は液晶化合物を内包する液晶ナノカプセル(LC-NCs)の作製について検討した。リキッドコアナノカプセルと同様に,表面張力や接触角などの界面化学的特性から算出される拡張係数の観点から,連続水相および内包する液晶化合物に対する最適なカプセル壁材料として,理論的にMMAを選択した。液晶化合物が溶解したO/W型エマルションモノマー油滴のみにエマルション重合を行ったところ,光散乱法,透過型電子顕微鏡観察,熱重量分析,そして示差走査熱量分析により,液晶化合物が架橋ポリマーシェル壁でカプセル化され,可視光の散乱が極めて少ない粒径が90 nmのLC-NCsを得ることができた。また,偏光顕微鏡観察により,内包する液晶化合物がネマチック-等方相転移温度を挟んで可逆的に光学組織を形成することを明らかにした。本研究成果は,学会発表(第68回高分子討論会(両親媒性ブロックコポリマーを界面活性剤として用いたモノマー油滴の重合による液晶ナノカプセルの作製(3Pd048),優秀ポスター賞)など)するとともに,学術雑誌にも掲載されたことから(J. Colloid Interface Sci., 563 (2020) 122-130, https://doi.org/10.1016/j.jcis.2019.12.050など),現在までのところ,本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】で述べたとおり,2年目となる2019年度は液晶ナノカプセル(LC-NCs)の調製について検討した。LC-NCsはフレキシブル液晶ディスプレイなどのデバイスに応用することに意味のある実用的な材料であり,電場応答性などの特性評価が必要となる。2年目の後半には,LC-NCsを用いた液晶セルを試作する段階にまで至ったものの,電場印加によるLC-NCs内の液晶化合物(JD-5037XX)の配向変化を観察することはできなかった。その原因として,可視光散乱を抑制するために100 nm程度までカプセルサイズを減少したため,カプセル内壁と液晶化合物との相互作用が相対的に増加したことがあると考えている。そこで,最終年度となる3年目の研究に先行して,次の2つの手法の検討を始めている。ひとつの手法は,カプセル壁材料として撥油姓に優れるフッ素原子を有するモノマーを用いる手法である。これまでの研究により,カプセル構造は拡張係数により支配されることを理論的にも実験的にも実証することができたことから,フッ素原子を有するモノマーの濃度がカプセル構造および液晶化合物の配向に与える影響について検討を始めており,近日中に論文および学会発表を予定している。もうひとつの手法は,カプセル壁に液晶性を付与することである。上述の通りカプセル内壁と液晶化合物との相互作用が増大することを逆手にとり,カプセル壁に液晶部位を導入することにより協同的に液晶化合物を配向させることを試みる。現在までにJD-5037XXと同じフッ素系液晶部位を側鎖に有するメタクリレート系モノマーの合成まで行っており,実際にO/Wエマルションモノマー油滴に溶解させ,駆動電圧などの観点から最適なカプセル材料の設計指針を確立したい。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Ellipsoidal artificial melanin particles as building blocks for biomimetic structural coloration2019
Author(s)
*M. Kohri, Y. Tamai, A. Kawamura, K. Jido, M. Yamamoto, T. Taniguchi, K. Kishikawa, S. Fujii, N. Teramoto, H. Ishii, and D. Nagao
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Journal Title
Langmuir
Volume: 35
Pages: 5574-5580
DOI
Peer Reviewed
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